ZAC2100 ニクシー撤退戦:中編




 デム軍曹にとってはよくわからない事態だった。ただ、自分が混乱している事だけはわかる。
 その混乱の一因は、軍曹の態度自体にあった。

 軍曹は、共和国軍の1200ミリ砲の砲撃が始まった時は、ニクシー基地の司令部施設地下にある独房に入っていた。数日前に他隊と行なった喧嘩の原因が軍曹にあると直属の上官が判断したからだ。
 もっとも軍曹は、その男を上官だとはまったく考えていなかった。男が、前線に出ることなく将兵に指図するだけの人物だったからだ。
 それに、その喧嘩を行なったのは事実だが、首謀者というほどの事を軍曹が行なったわけではない。ただたんに、普段から反抗的な下士官である軍曹を懲らしめるために独房へとぶち込んだだけなのだろう。
 それだけなら数日間の独房入りですんだのだろうが、軍曹は独房行きが決定した時にその上官を殴っていた。そして上官侮辱罪が罪状に加わり、軍曹は少なくとも一ヶ月は独房に入らなければならなくなった。
 独房に入った軍曹は、早くも一日目で後悔を始めていた。上官を殴った事自体を後悔していたのではなかった。娯楽も何も無い独房が退屈がたまらなかったからだ。
 それに独房を管理する憲兵隊の態度も気に入らなかった。所詮は、自分と同じ下士官のくせに憲兵隊に所属する下士官は威張りくさっているように見えたからだ。
 もっとも憲兵隊の下士官が実際に威張っているわけではない。ただ、軍曹のような反抗的な下士官を管理するためにはいかつい顔をするしかなかっただけだ。だが、軍曹がそれに気が付く事は無かった。
 軍曹は、憲兵隊の中でも腹の立つ下士官を独房から出た日のうちに殴りつけてやろうと考えていた。個人的な喧嘩の形にすればさほど問題もおきないだろう。そう軍曹は考えていたが、それは軍曹の間違いだった。下士官と思っているのは実は士官であり、しかもそれに軍曹が気が付いたのは、その士官を殴りつけた後だった。

 1200ミリ砲の最初の着弾と同時に、軍曹が入れられていた独房の鍵が開いていた。着弾の衝撃で独房を管理するコンピュータが誤作動したのが原因だったが、軍曹にとっては、ただ脱出のチャンスが訪れただけだった。
 だが、喜び勇んで独房から出た軍曹を、目をつけていた下士官がとどめようとしてきた。軍曹は思わず力の限り殴ってしまった。
 その下士官が士官である事は、その男が倒れこんだ時になってようやく気が付いていた。
 すぐに軍曹の周りを憲兵隊が取り囲んでいた。それを心配そうな顔で同じように独房に入っていた兵士達が見守っていた。
 困り果てた軍曹の頭に、考えが浮かんだのはその時だった。
 軍曹は、気絶した士官を指差しいった。この非常事態に我々がこんな所でくさっているわけには行かない、もう臆病者の士官など役には立たない、俺はこれからこのニクシー基地防衛のための義勇隊となる。
 さらに、勇気と愛国心のあるものは俺に続けとまでいった。
 軍曹には、扇動者としての才能が隠されているようだった。気絶した士官が、士官であると軍曹が気が付いたのは殴りつけた後だったが、その場にいた誰もが軍曹の言葉を信じていた。
 気が付いた時には、周囲の兵士達が同意して叫んでいた。ガイロス帝國万歳だのゼネバスに栄光あれだの他で聞いたら政治団体としか思えないことを兵たちは叫んでいた。独房に入っていた兵だけではなく、憲兵隊の一部もそれに加わっていた。
 軍曹は気が付かなかったが、そこにいたのはゼネバス人が大半だった。軍曹は、彼らの愛国心に火をつけたことに気が付いていた。それだけではない、扇動者となった自分が率先して彼らを率いなければならなかいことにも、否応なしに気が付いていた。

 それから軍曹と即席の防衛隊は、地下基地を走り続けた。
 実は、軍曹はその後の事など何も考えていなかった。ただ口からでまかせを言い続けただけだったからだ。さしたる考えも無いまま地下の格納庫を回っていたのは、使用できる機材が無ければ付いてくる兵たちもおとなしくなるだろうと考えていたからだ。
 すでに決死隊の出撃した後の格納庫は大半が空だった。いくつかの格納庫には収納されているゾイドがあったが、それもすべてが修理前の故障機だった。
 だが軍曹にとって幸か不幸か、数時間も歩きまわっているうちに、一団は手のつけられていない格納庫を発見していた。
 軍曹達が知る由も無かったが、その格納庫は、すでに上部施設が共和国軍の手に落ちていたため放棄されたものだった。だが、地下格納庫の存在は共和国軍は知らなかった。そのため両軍ともにこの格納庫を無視していたのだ。
 そこには、最新鋭機であるエレファンダーを中心とした数個小隊分のゾイドが格納されていた。

 軍曹は、これで後戻りの出来ない状態におちいってしまった。だが、ふと軍曹が周囲を見回すとだいぶ一団の員数が欠けていた。
 いつのまにか逃げ出した兵がいたらしい。
 ――なんだ、これなら俺もさっさとふけりゃよかったな
 だが、残っている兵たちは、すでに軍曹を期待に満ちた目でみつめていた。
 不思議に面倒見のいいところのある軍曹は彼らの目を見ていると逃げ出す事は出来なかった。
 内心でため息をつきながら軍曹は兵たちにゾイドを割り当てていた。
 だが戦闘指揮なんてめんどくさいことはしたくない、早くえらい人でも見つけて責任を押し付けてしまおう。
 軍曹は、無責任にもそう考えていた。


 ラティエフ少佐たちと分かれた後、ベルガー中尉はニクシー基地の地下通路を外周方面に向かっていた。
 決死隊の脱出を援護するために、共和国軍包囲網の内側と外部との連絡線を確保するためだ。時期と行動を起こす場所さえ間違えなければ、短い時間の間に連絡線を確保するのは難しくないはずだった。
 すでに地下通路にも共和国軍が侵入を開始していたが、それは本格的な侵攻というよりもは、本隊の侵入を前にした偵察部隊程度の規模でしかなかった。
 だが、その小部隊と戦闘に入った時、中尉はツヴァイの動きに困惑する結果となった。
 ツヴァイは、ただがむしゃらに敵部隊に突っ込んでいった。それは、すでに戦術的な行動などでは無かった。
 ただ、自分自身の損害に無頓着に敵と格闘戦を挑んでいるだけだ。その格闘の仕方も、力はあるのだが、技に欠けていた。ようするに子供が駄々をこねて手を振り回しているようなものだ。
 その時になって唐突に中尉は気が付いた。このツヴァイは戦闘処女なのではあるまいか。
 自然の状態の野性ゾイドからの改造や、人間の手で養殖されたゾイドには、あらかじめ戦闘の記憶が残されているか、それとも記憶を植えつけているが、誕生直後から人間の保護下にあったゾイドなら、一度も戦闘を行なわずに戦闘用ゾイドに改造されたことはそれほど珍しいものではないかもしれない。
 そもそも、このツヴァイは実験機でしかないから、戦闘を前提として開発されたわけではないのではないのか。
 しかも、オーガノイドシステムによって闘争本能だけは強化されているから、戦闘意欲だけはあふれている事になる。
 これは始末におえなかった。最後は自滅する形で終わってしまうのではないだろうか。

 だが、すぐに中尉はツヴァイとの効果的な戦闘法を身に付けていた。
 ようするに前に出ようとする意思の強いツヴァイに守備法を教え込むのだ。具体的に言えば、中尉はツヴァイが攻撃に当たる間も戦場全体を見回し、適切な動きをツヴァイに教えていくのだ。
 最初は攻撃のタイミングを外されて怒り狂っていたツヴァイは、やがて中尉の指示におとなしく従うようになっていた。ようするに中尉の判断を適切なものであると判断し、指示を重要視するようになっていった。
 これは、かなり効率のいい戦闘法だった。ようするに、ツヴァイが兵士であり、中尉が指揮官のように振舞う事になり、一機のゾイドというよりもは小規模な部隊の戦闘法に近かった。言い換えれば、中尉が頭脳で、ツヴァイが体だという事だった。
 防御戦闘を得意とする中尉と、攻撃を行なうツヴァイという一つの戦闘単位は、共和国軍の小規模部隊をことごとく撃破し、地上に躍り出ていた。
 ツヴァイが地上に出たところは、ちょうど共和国軍の前線直後になるところだった。この地上へのゲートはそれほど基地の外周部にあるわけではなかったから、決死隊の前線は相当押されていると考えていい。
 少しばかり考えた末に、中尉は、ツヴァイを共和国軍が構築している包囲網の後方になる場所を駆け抜けさせた。共和国軍の一線と二線部隊との連絡を絶つと共に、包囲網の弱点となる場所を探るためだ。
 しばし現れる共和国軍部隊を撃破しながら、ツヴァイは走り続けた。
 包囲網を破って、決死隊を救出するには、弱点となる場所を外部から突き、内部からは一点突破をさせるしかない。
 だが、弱点となる場所の選択を間違えば、包囲網を崩すことが出来ないまま戦力をすり減らしてしまう。だから場所の選択は熟考する必要があった。
 しかも包囲網を突き破るには、出来るだけ早い方がよかった。時間が経過するにつれて共和国軍の戦力は増援を受けて増大するからだ。
 中尉は、あせりながら弱点箇所を探していた。その焦りがつたわったのか、ツヴァイの攻撃衝動が強くなっていくのを感じた。

 弱点となる場所は、意外な場所にあった。それは、ニクシー基地とアンダー海との運河だった。
 もともとアンダー海に面する港町であったニクシーにはもちろん巨大な港が存在したが、ニクシー基地が基地機能を拡大するにつれて、中央部と軍港の間が離れていった。
 中尉が注目した運河は、軍港からの輸送に支障をきたすようになった基地中心部へ荷を輸送するものだった。
 もちろん大きなものではなく、横幅は10メートルも無いものだ。本格的な運河ではなく軍港で荷をいったん小型船に載せ換えてから輸送するようになっている。
 だが、中尉が注目したのは、その運河が半地下式となっている事だった。もともと台地状になっている基地中心部に輸送する事と対爆性を考えてそういう特殊な構造になっているのだが、この運河を使えば急に基地中心部に到達する事も可能だった。
 ただ、ここを使用すれば、どこに出るかも共和国軍に察知されてしまうことになるだろう。
 だから運河の入り口を守備する部隊が必要不可欠だった。中尉は、そこで単独行動をとっていることを後悔しながら立ち去ろうとした。
 防衛部隊が存在しない現在ではこのルートは使用できないと考えたからだ。

 デム軍曹は、エレファンダーを中核とした二個小隊程度の部隊を率いて基地周辺を歩き回っていた。
 純粋に考えるのならば、共和国軍の侵攻が始まっている基地中心部に突入すべきなのだが、軍曹はそこまでする気は無かった。
 それに、おそらく内部の味方部隊と連絡がつく前に共和国軍が彼らの部隊など蹴散らしてしまうだろう。慎重に越した事はないし、その前に誰かえらい人に指揮権を明け渡して楽になりたかった。
 そこに、大暴れをする改造ジェノザウラーの姿が見えた。
 そのジェノザウラーは、これまで見たことの無いような戦いぶりを示している。軍曹は、このパイロットに接触する事に決めた。
 軍曹は、ジェノザウラーはエースパイロットしか乗れないと聞いた事があった。ならば、士官級の搭乗員に違いない。

 立ち去ろうとした中尉は、通信が届いていることに気が付いた。素早く通信ボタンをオンにする。
 その瞬間に、調子のよさそうな愛想笑いをうかべる男が映った。
「ようやく繋がりましたな、自分はデム軍曹であります。自分は、この混成二個小隊と共に大尉殿の指揮下に入ります」
 眉をひそめながら中尉はその男を見返した。彼のいう階級が間違っているのだから、彼は知り合いというわけではないらしい。おそらく指揮官が戦死して混乱した部隊だろう。
 そう思いながら軍曹の部隊を眺めたが、彼らのゾイドに損傷した形跡は無かった。
 首をかしげながらも、中尉は素早く判断していた。彼らを防衛部隊として運河出口の守備に当たらせればある程度の時間は稼げるのではないだろうか。
「軍曹、ここの守備は任せる。私は基地中心部に取り残された味方部隊の脱出を支援する」
 有無を言わさぬ口調の中尉に、今度は逆にデム軍曹が首をかしげる番だった。


 ツヴァイが地下運河の出口から躍り出ると、そこには十数機の帝国軍ゾイドがあった。
 エレファンダーやブラックライモスの様な重装甲ゾイドに混じって、ヘルキャットやセイバータイガーといった高速ゾイドまで含まれていた。
「特設実験大隊、ベルガー中尉だ。ここの部隊指揮官は誰か?部隊所属は?」
 ベルガー中尉は素早く周囲の状況を確認しながら質問した。
「ニクシー特別防衛隊所属メイル少尉であります。中隊長は戦死、先任小隊長殿も戦死したので自分が指揮をとっております。自分の所属は第八中隊でありますが、壊滅した中隊から合流したものも多いです」
 まだ幼さの残る士官が通信に答えた。おそらく士官学校生徒か予備役将校が開戦によって軍務についたのだろう。
 残存部隊は、運河から運び込まれる物資の一時貯蔵庫に立てこもって防衛線を築いていた。
 もっとも、中尉の目から見ると、ずいぶん頼りない防衛線だった。お互いの射界は曖昧なままだから、同時に単一の目標を攻撃する場所もあれば、逆に誰も攻撃しないまま致命的なまで敵ゾイドが接近できる場所もあった。
「ここの指揮は私が執る。配置図を転送する。データ通信用回線開け」
 純粋にいえば、これは軍法上正しい事ではない。メイル少尉が指揮権の委譲を拒めば、中尉が指揮をとる事は出来ない。だが、メイル少尉はうなずくと全員にいった。
「みんな、特設大隊のベルガー中尉殿が来られたぞ。もう大丈夫だ」
 明るい表情でいう少尉に、隊員たちの目が輝くのが見えた。中尉は、その光景に困惑した。特設大隊がそれほど有名だとは思わなかった。中尉の困惑に気が付いたのか、メイル少尉がいった。
「自分の部下達は、大半が全面会戦の際の撤退戦で特設大隊に編入されたものですから。あの時も中尉の指揮下で戦ってきたものばかりです」
 そういわれた中尉があわてて兵たちの顔を見渡すと、確かに何人か見た顔があった。その全員が中尉を期待に満ちた目で見ている。
 あれはラティエフ少佐の指示に従っただけだ。中尉はそう言いかけたが、兵たちの期待を無視することもあるまいと黙って新しい配置図のデータを転送した。
「次に来た敵を撃退してから、運河から脱出する。出口では友軍が防衛についている。もう少しの辛抱だ」
 そう中尉がいうと、兵たちの目に生気がともっていくのが感じられた。
 これならなんとかなるかもしれない。そう中尉は考えていた。

 数分後、最初に突入してきた共和国軍部隊は、ディバイソン三機とカノントータス七機で編成された突撃小隊に、ガンスナイパー十機一個小隊が随伴していた。
 中尉が予想していたよりも数が少なかったが、メイル少尉が率いる疲弊した残存部隊を掃討するには十分な戦力だった。
 先鋒のディバイソンから放たれた十七門突撃砲の連続砲撃を、メイル少尉が搭乗するエレファンダーのEシールドが受け止める。だが、長時間の戦闘で出力が大幅に下がっているEシールドは完全には砲撃を受け止められずに、突撃砲の105ミリ砲弾が数発、エレファンダーの本体に弾着する。
 エレファンダーが、105ミリ砲弾に耐え切れずに倒れこむのをみてガンスナイパーが背部のブースターを全開にして突入してくる。ディバイソンとカノントータスは、これを支援しようと支援砲撃を開始しようとしていた。
 そこに、メイル少尉のエレファンダーの陰に隠れていたツヴァイがスラスターを吹かして横へ躍り出た。そして、頭部に搭載された荷電粒子砲の砲身を発射体制にまで伸ばした。中尉は同時に、脚部のアンカーを展開する。
 突然のジェノザウラーの出現に驚いたガンスナイパーが慌てて退避しようとした。だが、荷電粒子砲のチャージは終了しており、ツヴァイは間髪いれずに荷電粒子砲を後方のディバイソンとカノントータスに向けて発射する。発射と同時に、ベルガー中尉は最終加速バレルの方位調整磁気を調節し、なぎ払うように突撃小隊に向けていた。
 荷電粒子砲の直撃を受けたディバイソンとカノントータスは、一機あたりの荷電粒子照射時間が短かった事と、重装甲の為に大破こそまぬがれたものの、一個小隊十機全機が戦闘不能になっていた。
 また、荷電粒子砲を近接距離で照射された衝撃で、ガンスナイパー数機が転倒していた。その数機を含めて、接近していたガンスナイパーに、満を持した残存部隊が射撃を開始する。
 わずか数分で突入してきた共和国軍は撤退を開始した。最後の共和国軍ゾイドが視界から去った時点で、中尉が後退を指示した。

 デム軍曹は、メイル少尉とは全く違った理由で、防衛線を倉庫群に築いていた。その防衛線は、敵を積極的に撃破するのではなく、敵から出来るだけ発見されない位置に設置されていた。
 軍曹は、中尉に命令されたものの、積極的に防衛戦を行なう気は無かった。どうせ、包囲網の中心地に向かった中尉が返ってくる事など無いのだ。あんな包囲網に突っ込んで戦死しないはずは無い。そう考えていたからだ。
 だから、適当に時間がたったら、さっさと逃げようと思っていた。結果的に、その消極策が軍曹たちを救った。偵察のプテラスが運河の出口を探して数回、軍曹たちの真上を航過していったが、隠れていたゾイドを発見する事は無かった。
 だが、三十分もすると、共和国軍が侵攻してきた。軍曹はさっさと引き上げようと部下に命令した。
「ですが中尉殿が指示された命令に反しますが」
 一人の兵が、軍曹に驚いて反論する。それを軍曹が苦りきった顔でかえす。
「おまえらは要領が悪すぎるんだよ、包囲網の中へ突入した人が帰ってこられるもんか、いまごろ消し炭になってるに違いない」
「ですが・・・あの中尉殿ならどうにかなるような気がします」
 不思議そうな顔でいうその兵の様子に、軍曹は絶句した。周りの兵を見回すとどうやら同じ考えのようだった。
「好きにしろ。だがどうなっても知らんからな」
 軍曹はふてくされながらいうと、渋々ながら防衛戦の指揮をとりつづけた。

 大きく破損したエレファンダーが運河から出てきたのはその直後だった。そのエレファンダーは、あちこちの装甲が剥げかかっており、武装も大半が吹き飛んでいた。どうにか自衛戦闘は可能な様子だったが、積極的に戦闘を行なう事は無理だろう。
 唖然として軍曹がエレファンダーを見ていると、続々と運河からどこかしら破損したゾイドが現れた。そして最後にジェノザウラーが出現すると、残存部隊と軍曹の指揮下の部隊の双方から歓声が上がった。
 軍曹は、仏頂面のまま、残存する部隊をまとめ上げて共和国軍部隊に向かうツヴァイの背部を見ていた。
 これから包囲網の突破など出来るとは思えない。そう表面では考えながらも、頭の奥底では、軍曹もあの中尉ならやってのけるかもしれないと思っていた。


戻る 次へ
inserted by FC2 system