ZAC2101 ジオレイ山脈山岳戦:後編




 ベルガー大尉には結局、会議が終わるまで事情を説明されないままだった。相当奇妙な事だったが大尉はもうその事について考えるのはやめていた。ラティエフ少佐の考えは常に大尉の常識を上回っており、しかも常に正しかった。だから今回も深く考える事はせずにラティエフ少佐の考えを聞いておこう、そう思ったからだ。
 会議が終わると各師団の指揮官達の大半が去っていった。後には大尉とマッケナ少佐、それに方面軍司令官とその副官だけが残った。

不必要な人員がいなくなったのを確認した後、マッケナ少佐が司令官の目線にうながされて口を開いた。
「まずは、どこから説明したものかな」
 それを遮るように大尉が口を出した。
「その前にマッケナ少佐とラティエフ少佐はどのような関係にあるのですか。今思い出したのですが少佐殿とは以前ニクシー基地のラティエフ少佐の部屋でお会いした事がありましたね」
 そう大尉が言うとマッケナ少佐は困ったような顔をした。
「奴とは同期でな、あの時は情報の交換に会っていた。奴も私も、そして司令官もある事を懸念して今回の脱出計画を立てたのだが・・・これは君の部隊でなければ実行不可能な任務なのだが」
 そこまでマッケナ少佐が言うと、それまで黙って聞いていた司令官が重い口を開いていった。
「そこから先は私が話そう。脱出理由の第一は勿論三個師団という比較的大兵力を遊兵化させるのを防ぎ兵の命を救うためだ。だが、それ以上にこの方面軍は全滅させてはいけない部隊なのだ」
 大尉はそれを聞いて首をかしげた。方面軍という大部隊の編成が全滅してはいけないのは当然のことではないのか。だがそれを口に出すと司令官は悲しそうにため息をついて続けた。
「勿論、方面軍編成が失われることは帝国軍にとって大きな損失となろう。だがそれは帝国陸軍にとってということであり、いまだ百個師団の兵力を有する帝国にとっては実質上の戦力低下があるわけではない・・・」
「だが政治的に見ると方面軍の全滅は軍事面以上の影響を帝国にもたらす事になる」
 口ごもった司令官の後をついでマッケナ少佐がいった。
「重要視すべきは方面軍を構成する将兵の大半がゼネバス系ガイロス人だということだ。正確に言えば二個擲弾兵師団を構成する将兵のうちゼネバス人が七割を超えているし機甲師団や方面軍司令部の中にもゼネバス系の将兵が多いのだ。
 この理由は西方大陸南部にはゼネバス系の住民が多数在住しているからという事と南部方面軍はあくまでも第二戦線であり本国からは重要視されていなかったからだな」
 そこまで言われておぼろげながら大尉にも方面軍を脱出させなければならない理由が見えてきた。
「ここでゼネバス人で編成される方面軍が壊滅し、さらにこれに帝国が救助を行なわなかった事が明らかになるとゼネバス人の民族的な感情がどうなるかわからない。
 参謀本部でも作戦部などではこのことを理解している参謀は少ない。参謀達のなかにはここで方面軍に共和国を釘付けにさせてその隙にニクシー基地を奪取するなどと夢のような事を言っている馬鹿どももいるそうだ」
 そんな作戦が成功しそうにないのは大尉でもわかった、だから急には参謀本部がそんな作戦を考えているとは信じられなかった。
 だが、同じ参謀本部の情報部に所属する少佐には作戦部の作戦が漏れ伝わってきてもおかしくはない。その事に気が付くと大尉は暗然たる思いにとらわれた。
 ふと大尉が目線を上げると、司令官が大尉をみつめているのに気が付いた。
「状況は先程聞いたように極めて厳しい。だがこの作戦は帝国の将来のためにも成功させなければならない。引き受けてくれるか大尉?」
 そこまで言われて断るすべもないように思えた。大尉はゆっくりと頷いた。
 司令官はそれを見て好々爺のような笑みを見せるとそばに立っている副官を見ていった。
「詳細は副官と煮詰めて欲しい。では頼んだよ大尉」
 そして部屋には副官と大尉だけが取り残された。副官に頼んで大尉はメイル少尉とデム軍曹も呼んでもらった。五分もしないうちに四人だけの作戦会議が開始された。

 副官の状況説明は的確であり、三人の質問にも戸惑うことなく答えた。
「共和国軍の配置はご覧の通りです」
 モニターに共和国軍の閉鎖拠点の予想図と偵察写真をオーバーラップ表示させながら副官が説明を続けた。
「予想しうる敵戦力は大型ビームキャノン完全装備のカノントータス二個中隊を中核としています。その守備部隊は一個大隊程度です。このカノントータスの長距離射撃により最低鞍部は完全に閉鎖されています」
「カノントータスの二個中隊くらいどうにかなるのではないですか?完全な封鎖には程遠いような気がするのですが」
 疑問に思ってメイル少尉が副官に質問した。もっとも大尉やデム軍曹もその点を疑問に思っていた。
「その質問はもっともです。これが平原ならば共和国軍による閉鎖は不完全なものとなっていたでしょう。しかし高地に配置されたカノントータスから鞍部への射撃は可能でもその逆は極めて困難です。
 カノントータス側は高度に防備された陣地から狙撃を繰り返せば良いのに比べてこちら側はカノントータスを射程におさめるまでに険しい斜面を登らなければいけません。その斜面を登るのはいかなるゾイドでも時間がかなりかかりますからその間にカノントータスの集中射撃で破壊されてしまうでしょう。
 また鞍部の通過にかかる時間を考えるとカノントータスの射撃を最低でも二回ほど食らうでしょう。これに耐えるにはコング級でもなければ無理です。鞍部の地形から考えて高機動によって回避し続けるのも難しいでしょうね」
 副官は一気に言うとため息をついた。他の三人も多かれ少なかれげんなりとした顔をしていた。
「で、まさか何の策もなしに我々を鞍部に送る出すのではないでしょうな」
 大尉がモニターをみつめながら皮肉そうな声でいった。共和国軍の布陣は完璧だった。最小限の戦力で最大の効果を得ている。これを攻略するのはかなり困難なように思えた。
 だが、副官はわずかに笑みを見せながらいった。その笑みに同情する目線が含まれていたので大尉は嫌な予感がしていた。
「この拠点は一見攻略が困難なように見えますが一箇所だけ弱点があります」
 確信を持っていう副官に大尉はため息をつきながらいった。
「これ以上の高度から奇襲をかける」
「その通りです。その作戦なら共和国軍の予想していない地点から攻撃ができます。共和国軍は山脈を越えて攻撃される事を考えていないようですから。もっとも我々も考えてはいなかったのですが、これだけの高度で軍事行動を行なうなど常識はずれですから」
 大尉と副官の会話に、少尉と軍曹は顔を見合わせて驚いていた。
「本当ですかい大尉殿、俺達はまたあの糞ったれな山を登らなきゃいけないんですか」
 心底嫌そうな顔で軍曹がいった。少尉も露骨に顔には出さないがあまりこの作戦を好んではいないようだ。
「今にして思えば少佐が我々にわざわざ山脈を縦断させたのは高地に適応させるためだったのかもしれないな」
 それには答えずにおちついて大尉がいうと二人はあきらめたような顔をして同じタイミングでため息をついた。まだ中隊は困難な状況にあるようだった。


 結局第五中隊が方面軍司令部で休息と作戦の立案を行なえたのは一週間でしかなかった。天候を考えると一週間後を見逃すと方面軍の撤退の予定が大きく遅れてしまうからだ。その間に中隊は大慌てでおおまかな襲撃作戦を作成し、その作戦計画にそって訓練を行なった。
 もっとも訓練とはいっても分隊長クラスに襲撃地点の確認を行なわせると後は山岳地帯をゾイドで歩き回るくらいしか出来ることはなかった。
 中隊には作戦の決定と同時にセイバータイガーやヘルキャットで編成された一個小隊が増派されていた。山岳戦になった場合はその臨時編成の第四小隊が役に立つはずだった。両機種共に山岳戦を得意とするゾイドだからだ。
 だが、第四小隊の編成のせいでベルガー大尉とメイル少尉は中隊編成について頭を悩ませる事になった。ほかのセイバータイガーやヘルキャットも一つの部隊にまとめようとしたためだ。
 その結果、大尉が直率する第一小隊にもとからいたセイバータイガーやヘルキャットそれにレブラプターを配属し、第二第三小隊はエレファンダーやイグアンを配備した。これによって作戦もある程度決定された。大尉が高機動小隊二個を率いて基地に突入し、これを火力に優れた残りの二個小隊が援護することになった。
 単純な作戦だったが、この作戦では速度を要求されるはずだったから単純な方が齟齬が少なくて良いだろう。ベルガー大尉とメイル少尉はそう結論付けた。
 むしろ二人には他に詳細な作戦など思い浮かばなかった。どうみても基地に立てこもる三倍の敵を排除する方法など見つからなかった。
 なるようになれだ、大尉はそう考え始めていた。以前の自分なら無謀な作戦だと考えるはずだったが、ラティエフ少佐を信頼している今ではどうにかなるような気がしていた。
 だが、メイル少尉もまた大尉の指揮ならばどうにかなるような気がしている事など気が付くはずもなかった。

 ジオレイ山脈を越えるのは、今度は行きの時よりもだいぶ楽だった。中隊全員にいきわたるだけの酸素瓶を方面軍は用意していた。それは撃墜破したレドラーから回収されたものだった。
 酸素瓶の容量が限られているから平地と同じような酸素圧とはいかなかったが、少なくとも稜線越え前後の本当に気圧が危険なまで下降する地帯に限った使用なら司令部や村落のある高度程度の酸素圧を設定する事ができた。
 そのせいかもしれなかったがベルガー大尉は頂上に立っても以前ほどの感動は得られなかった。最初は景色に慣れてしまったのかもしれないと考えたが、ジオレイ平野側の地形は初見だったからそうだとは思えなかった。
 あの時と何が違うのか、しばらく考えていたが理由が思い当たらなかった。大尉は首を振ると考えるのをやめて頂上を後にした。

 酸素瓶の存在は、ただ単に登頂を容易にさせるために準備されたわけではなかった。
 作戦の開始時間までに攻撃開始地点へ確実に進出する為だった。作戦開始時刻は方面軍の撤退作戦との関係上ずらすわけには行かなかった。
 作戦を大まかに立案したラティエフ少佐たちのグループによって作戦の各段階の時間は設定されていた。それは西方大陸からの撤退に使用する船舶の運航スケジュールから算出されたものだった。
 この撤退作戦は共和国軍が占拠し使用しているニクシー基地への襲撃作戦をおとりとして使用していた。だが特殊部隊を中心として行なわれるその襲撃作戦の詳細は不明だった。わかっているのは作戦が行なわれる大まかな時期だけだった。
 それは情報部に所属するマッケナ少佐にとっても同じ事だった。どうやら本国の情報部でもその作戦の詳細は掴んでいないようだった。
 しかも本国からの情報の感触からするとその作戦は作戦部の中でもごく一部のものしか知らされていないだった。実施する部隊の情報は勿論つたわってこなかった。
 だがラティエフ少佐は実施部隊の見当をある程度つけているらしい。ベルガー大尉が方面軍司令部を出撃する時にマッケナ少佐はそういっていた。マッケナ少佐は暗にPK師団の存在を指摘しているようだった。PK師団と結びつきの強い技術部第二研究所の動きが活発化していたからだ。
 デスザウラーやギルベイダーといった高度技術の投入されたゾイドの復元を担当していた第二研究所は開戦直前になって研究所の人員を他の部署に転用するためにその規模を大幅に縮小させていたが、デスザウラーの復元計画の頃から計画の推進者であった摂政ギュンター=プロイツェンの指示によって活動を再開していた。
 現在では第二研究所ではPK師団用の新型ゾイドを開発しており、さらにそのゾイドは完成を目前としているという情報があった。マッケナ少佐はその新型が作戦に投入されるのではないかと考えていた。
 だが、ベルガー大尉にとってはそれはどうでもいい話だった。正直にいえばPK師団とあまりかかわりたくないということもあった。憲兵隊でもないのに正規軍に対する逮捕権まで有するPK師団をベルガー大尉は他の多くの士官同様に嫌悪していた。
 だからPK師団がどうなろうと知った事ではない。ただ、その作戦のおかげで撤退作戦が可能になるのならばその状況を利用させてもらうだけだった。

 そんなことを考えていると、大尉は中隊の一番前を歩いているツヴァイのさらに前方に動いているゾイドをみつけた。
 大尉は素早くそのゾイドからの射界をふさぐ遮蔽物を探して隠れた。中隊はすでに何もいわなくても大尉の行動を見ただけで同じように遮蔽物の陰に隠れていた。
 だが、大尉はそのゾイドを確認すると、すぐに遮蔽物からでてそのゾイドに向かって走り出した。後に続く中隊は戸惑ったようにそれを追いかけた
 そのゾイドはシルヴィのサーベルタイガーだった。サーベルタイガーの方でも近づいているツヴァイを確認するとコクピットを開放してシルヴィがツヴァイのほうに顔を見せた。
「また会ったな隊長。やっぱりまた会うような気がしていたんだが正解だったようだ」
 大尉は一週間ぶりに聞くシルヴィの声が疲れているような気がしていた。


 ベルガー大尉の所感は外れてはいなかった。シルヴィは大尉達と分かれた後の話を始めた。
「わたしが村に戻ったのは次の日の朝だったかな。しばらくは何事もなかったんだが、いまから3日前にいきなり共和国軍の一団が村を襲撃してきたんだ」
 シルヴィは淡々と話していたが、それにメイル少尉が驚いた顔で尋ねた。
「しかし・・・なぜ共和国軍がそんなことをしたんだ?わりにあう行動ではないと思うのだが。襲撃の事実が周囲の村落に伝われば共和国に対する感情が悪化するのは目に見えている」
「それはどうかな」
 大尉が目を伏せたままぼそぼそといった。
「共和国にはこの周辺地帯を完全に制圧する意思があるということだろう。もちろん村落の意思など尊重しない。
 そもそも小都市、もしくは村落の帰順が問題となるのは帝国がいまだ戦力を保持していると考えた時だけだ。帝国がこの大陸から完全に撤退すれば帝国を支持する村落が存在しても共和国にとっては問題とはならない。村落や小都市が単体で保有する戦力では脅威にならないからだ」
「そんなところだろうな。それに我々の村落はゼネバス系ということで周囲の村落からは一定の距離をおいてあったから共和国軍の戦力を知らしめる為のスケープゴートとするのに都合がよかったのではないかな」
 シルヴィはまるで他人事のように話していた。それが逆に痛々しくて大尉は目をそらした。
 そこへ不思議そうな顔をしてデム軍曹が割り込んだ。
「それにしても何の理由もなしに村を襲うってのは仁義的に問題があるんじゃないですかね?条約違反でもあるでしょう」
 大尉はそれを聞くとさらに暗い表情になった。だが、そんな大尉の様子には構わずにシルヴィはいった。
「理由ならある。帝国軍残党への協力だ」
 呆気にとられてデム軍曹は立ちすくんだ。
「つまりは我々への協力によって村は襲われたという事だ。
 シルヴィ、その・・・」
 大尉は謝罪をしようとしたがシルヴィに先手をとられた。
「謝るのはよしてくれ。我々は全体の意思として隊長たちを助けたのだし、それに我々の事を考えていて隊長の判断が鈍ったのでは話にならない
 ところで隊長たちは共和国軍を襲撃しに行くのだろう。わたしも連れて行って欲しいのだが」
 なんとはなしに予想していたシルヴィの言葉に、大尉は迷ったような表情をした。
 戦力的なことをいえばシルヴィの同行は心強いものだった。彼女と行動を共にしたのは数日間だけだが、それだけで水準を越えるだけの操縦技術を保持しているのはわかっていた。旧式化しているとはいえ大型ゾイドのサーベルタイガーにしても無視できる戦力ではない。
 だが心情的には彼女を連れて行く気にはならなかった。少なくともカノントータス隊を無力化できる自信はあったが、一個大隊もの守備隊がいることを考えると生還は困難だろう。だから恩人ともいえるシルヴィを連れて行く気にはならなかった。
 大尉が口ごもっているとメイル少尉が大尉の代わりにいった。
「君を連れて行くことはできない。我々には君に恩義がある。だから危険な作戦には同行させたくない」
 そういおうと少尉は大尉の方を向いた。大尉も同意のしるしに軽く頷いた。
 だがシルヴィはむしろ不思議そうな顔でいった。
「隊長たちだけで作戦を遂行できるのかな。目標はカノントータスなのだろう、だが守備隊の防衛網を突破する事ができるとは思えない」
 大尉は嫌な顔をしていった。いくらなんでも我々の戦力を過小評価しているのではないかと。奇襲によって防衛網が整う前にカノントータス隊を撃破することは可能のはずだった。
 常識から考えてカノントータスには長距離用に電力ユニットなどが接続されているはずだ。それはつまりカノントータスは回避行動がほぼ不可能だという事でもある。
 だがそのことをつげるとシルヴィは納得したような顔でいった。
「隊長はまだ気が付いていないようだな。奇襲が可能なのは隊長たちが山岳地帯で満足な作戦行動がとれないと共和国軍が考えた時だけだ」
 大尉はそれを聞いて眉をしかめた。まだシルヴィが何を言いたいのかよくわからなかったが、なにか嫌な予感がした。
「だが共和国軍は隊長たちが高地で活動ができるだけの能力を有している事をすでに知っている。村落への襲撃がそれを証明している。おそらく共和国軍は最初から隊長たちを目標にしていたのではないかな。しかし隊長たちが山脈を越えるとまでは考えていなかった。だから隊長たちは襲撃を逃れたんだ。」
 シルヴィの論理は非の打ち所が無かった。おそらくその推察は当たっているのだろう。大尉はため息をついた。そこまでは考えていなかったのだ。村落の襲撃そのものに注目しすぎてその目的までは考えていなかったのだ。当事者であるシルヴィの方がよっぽど冷静に自体を観察していた。
 だが、それならなおの事、彼女を連れて行くわけには行かなかった。危険度という点では上回っているのだから。大尉は暗い表情のままそれを告げた。作戦はどうあっても遂行するつもりだった。一個中隊の戦力がなだれ込めばカノントータス隊まで到達できる可能性はないわけではないのだから。
 しかし、シルヴィは意表をつくことをいった。
「でもね隊長、わたし以外の村の人は周囲の村に行ってしまったんだ。わたしをここにおいておく方が恩知らずだと思うけどね。
 それにわたしは奇襲できる場所を知っている」
 駄々をこねているようなシルヴィを困った顔で見ていた大尉の顔がそれで一変した。
「奇襲可能な場所があるのか?」
 慌てていう大尉にシルヴィはいたずらっ子のような顔でいった。
「同行を許可するなら地元民しか知らないルートを教えてあげるよ」
 最初からそのつもりだったのだろう。にやにやと笑うシルヴィに大尉は憮然とした表情で頷くしかなかった。


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