タンバー級潜水艦





<要目>
排水量 2,100/2,800t(水上/水中)   全長 105m  出力 9,000/2,740馬力(水上/水中)
最大速度 24/8.5ノット(水上/水中)  乗員 100名

兵装
連装53口径152mm砲 1基
21インチ魚雷発射管 8門(艦首6門、艦尾2門)
50口径3インチ高角砲 1基
7.62ミリ機銃 2基

 タンバー級は、第二次欧州大戦勃発によって軍縮条約が失効化された後、米海軍が最初に建造した潜水艦である。
 それまで米海軍は、軍縮条約による保有排水量制限によって、外洋で運用する艦隊型潜水艦としては小型に過ぎるカシャロット級潜水艦の大量建造を行っていたが、逐次改良が施されていたとはいえ、排水量の小ささからなる制限から、潜水艦隊ではその性能には常に不満を抱いていた。
 軍縮条約の無効化によって、米海軍はようやく彼らが理想と考える潜水艦の建造を行うことが出来たのである。その性能要求を概略化すれば、大型のバラクーダ級を小型のカシャロット級の延長である艦隊型潜水艦に取り入れるといったものだった。
 バラクーダ級は、艦隊主力から先行して、敵主力などの長距離偵察、哨戒を実施する巡洋潜水艦であり、強大な砲力や戦艦クラスを上回る最大速力も、いわば潜水可能な偵察巡洋艦として運用することを想定されていたからだった。
 これに対して、タンバー級では、カシャロット級同様に主力艦隊自体に随伴して、戦闘時には敵主力艦への雷撃などを実施する艦隊型潜水艦として建造されていた。

 タンバー級の特徴は、カシャロット級に倍する余裕のある排水量によって得られた強力な兵装にあった。高角砲と対空機銃はカシャロット級と同様のものを搭載しながら、さらに艦橋構造物にはバラクーダ級に搭載されたものと同じ測距儀を搭載し、その後方には新たに開発された152ミリ連装砲が据えられていた。
 この152ミリ連装砲は、オハマ級軽巡洋艦に搭載されているものと同型で、これに潜水艦搭載用に水密性の追加などの所要の改造を施したものである。バラクーダ級と比べると備砲の口径は小さく、搭載数も少ないが、バラクーダ級が敵偵察巡洋艦との遭遇を想定して強力な備砲を搭載したのに対して、艦隊主力に随伴するタンバー級が単独で敵大型艦と交戦する可能性は低いため、駆逐艦級と交戦が可能な程度として152ミリ砲が搭載されたものである。
 しかしながら、同時期の他国潜水艦が精々同クラス砲を単装、かつ防盾すら持たないむき出しのままで搭載する程度に対して、連装で砲塔式の備砲を備えるタンバー級はやはり異様な存在だった。
 この備砲に加えて、タンバー級では艦隊型潜水艦本来の機能である雷装も、これまでの米海軍潜水艦よりも強力な前部6門、後部2門の計8門の発射管が搭載されていた。この魚雷発射管を支援するために、艦内の発令所には魚雷方位盤がカシャロット級に引き続いて搭載された。

 その他の対空兵装の高角砲、機銃はカシャロット級と同様のものを搭載した。
 このうち、機銃は至近距離での自衛戦闘用であり、高角砲は、当初艦隊に随伴して他の水上艦艇とともに対空砲戦を実施するために搭載された。しかし、実戦では艦隊型であっても潜水艦が他艦と共同で対空砲戦を行うことは極めて稀であり、軽量化のために太平洋戦争中に撤去された艦も少なくなかった。
 他に有力な備砲を搭載しないカシャロット級とは異なり、タンバー級では限定的ながら対空砲戦が可能な152ミリ連装砲を装備していたため、高角砲の撤去が大々的に行われていたようである。

 前級に対して大幅に上昇した排水量の艦体を駆動するために、大出力のディーゼル発電機四基が搭載されている。小型のカシャロット級では、容積を削減できるためにディーゼル直結式が選択されていたが、タンバー級では余裕ができたために、効率のよいディーゼル発電機と軸と直結したモーターの組み合わせによるディーゼル・エレクトリック方式が採用されている。
 また、カシャロット級では軸直結式のディーゼルエンジンから発せられる大きな振動のために、制限速度域が大きな問題となっていたが、タンバー級ではディーゼルエンジンは発電機を回転させるだけなので、常に最適な回転域で駆動させることが出来るため、水上でも比較的静粛性が高かったと言われる。
 大出力のディーゼル発電機、大容量電池、効率のよいモーターの組み合わせによって、タンバー級は艦隊型潜水艦として運用するのに十分な水上、水中速力を発揮することが出来た。

 タンバー級は、小型すぎるゆえに常に性能に不満を抱かれていたカシャロット級の代わりに、艦隊型潜水艦として運用された。もっとも、大量の兵装を搭載したために、排水量に比して艦内容積は意外に制限されており、補給物資の搭載量はさほど多くはなく、実用航続距離はさほど長くはなかった。
 タンバー級の就役によって、それまで艦隊型潜水艦として就役していたカシャロット級は沿岸や近距離の防衛戦闘用に転用されていた。
 太平洋戦争中も大多数が現役にあったタンバー級は、強力な兵装を持つことから日本海軍に恐れられていた。特に大口径砲を備えていたことから、これを利用した通商破壊戦を大々的に実施されることを警戒されていたのだが、実際には米海軍は太平洋戦争が勃発するまで通商破壊戦の研究を実施したこともなく、艦長レベルどころか艦隊司令官レベルでも演習を実施したこともなかった。
 日本海軍にとって、東南アジア友好諸国からの通商路付近に本拠地を持つことから、大きな脅威であった米海軍アジア艦隊所属のタンバー級潜水艦は、日本近海での通商破壊戦を実施する以前に、開戦直後に殲滅されていた。






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