伊407潜水艦





<要目>
排水量 5,300/6,610t(水上/水中)   全長 122m  出力 15,000馬力
最大速度 20.1/24.2ノット(水上/水中)  乗員 130名

兵装
53.3cm魚雷発射管 8門


伊400型潜の改設計艦につき同型艦無し
 伊400型潜の改設計艦は大半が誘導弾発射母艦に改装されたが、砲撃潜水艦など一部の艦は原設計とは大きく異なる改造を受けた艦もあった。伊407潜はその中でももっとも先進的といわれた艦である。
 艦体は大きく改装され、水中での抵抗を減少化させる為に艦橋は小型化されている。水面下であったため目立たないが、船体も潜高型、潜高二型と同様に水上ではなく水中での行動を優先させたヘラ状の船首構造をとっている。
 そしてそのもっとも大きな特徴は原子力機関の採用である。対独戦の終結後、独逸の原子力開発計画の吸収により大きく進展を遂げた日英の原子力開発の第一の成果が伊407潜に採用された原子力機関だった。そもそも伊407潜は、補機を含めると巨大となる初期レベルの原子力機関を収めるために、原型となった伊400型潜の余裕のある大型船体が採用されたのである。
 原子力機関の大出力と水中行動能力を高めた船型の採用によって伊407潜は現設計とはまったく異なる性能を持つこととなった。竣工当初は試作機に毛の生えた段階の未成熟な原子力機関のトラブルが多発したが、関係者の多大な努力により50年代に入る頃には作戦行動が可能なレベルにまでになっていた。

 伊407潜は対米戦において原子力潜水艦の有用性を証明した。他の通常動力艦は米国海軍が制圧している海域の奥深くまで進出するのに四苦八苦していた。電探技術の発達により水上航行は自殺行為となっていたためである。だが、伊407潜は、大抵の対潜艦艇よりも高い速力をほぼ常時発揮させることが可能だった。
 つまり通常動力型潜水艦が静粛に襲撃機会をうかがい続けることで対潜艦艇に対抗するのに対して、伊407潜は、常に走り回ることで対潜艦艇の能力を飽和させることが出来たのである。
 伊407潜に対して米海軍が高速対潜艦艇を差し向けたことでこのような戦術は不可能となったが、それでも原子力推進によって実質上無限ともいえる航続距離をいかして幾度となく米軍勢力圏内奥深くに潜入し、襲撃を繰り返した。

 このように大きな戦果を示したことから、戦時中に原子力潜水艦は伊号に変わる新たな艦種名称を与えられた。伊・呂・波という排水量による識別から一歩離れたまったく新たな名称として考えられたのが亜号である。
 これにより初の原子力潜水艦として本来ある種の実験艦であった伊407潜も名称変更された。名称変更が正式に決定された時点で新型の量産型原子力潜水艦亜一号型が五隻建造中であったため、伊407潜は亜06潜と呼称された。





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