伊351型潜水艦





<要目>
排水量 3,500/4,300t(水上/水中)   全長 111m  出力 3,700/1,200馬力(水上/水中)
最大速度 16/6.3ノット(水上/水中)  乗員 60名

兵装
連装25mm機銃 3基
53.3cm魚雷発射管 4門(予備魚雷無し)

準同型、伊361型潜水艦(輸送潜水艦)

 伊351号潜は、日本海軍が軍縮条約の無効化後に、通常の潜水艦のように戦闘任務用ではなく、輸送任務専用に建造した潜水艦である。ただし、その建造は日本海軍で潜水艦を集中運用する第6艦隊からの要求によるものでは全くなかった。
 元々は、大型飛行艇に洋上で燃料補給をおこなうことで、航空哨戒範囲を格段に拡大することを目的としていた。この任務についた場合、被支援対象となる飛行艇の航続距離に天候悪化などの燃費率悪化などを見越して、ある程度の余裕をもたせた予定補給海域に予め進出して待機するが、水上艦艇とは異なり潜水油槽船である伊351型では、状況に応じて潜水することで敵哨戒部隊から逃れて隠密行動をとることが可能とされていた。
 このような任務を行うため、伊351号潜は対艦攻撃、泊地偵察や哨戒、通商破壊を実施する他の潜水艦とは異なり、潜水艦を集中配備された第6艦隊所属とすることにさほど意味があるとは思えずに、建造時には同じく飛行艇支援を主任務として建造されていた水上機母艦秋津洲と連合艦隊直率として戦隊を組むことも計画されていた。

 だが、実際に建造された伊351号潜は、計画途中で幾度か予想された任務に変更があったことから、当初計画とはいささか異なる姿で就役した。その艦体構造は第一次欧州大戦時にドイツで建造されたドイッチュラント型潜水商船を参考に拡大されたものとされた。
 当初は純粋な飛行艇用の移動燃料タンクとして計画されていたため、非武装、あるいは甲板上に若干の対空砲のみであったが、任務に離島に展開する航空部隊への補給及び、他潜水艦への給油を行うことが追加され、敵地での長時間の行動も予想されたため、第6艦隊からの要望で自衛用に4門の魚雷発射管が追加されていた。
 また艦橋は、伊351号潜の建造計画に前後して急速に発展したレーダー対策として、浮上航行時にレーダー波をそのまま電波源方向に反射せずに海面にそらすようになっていた。
 このため他の日本海軍潜水艦の艦橋とは構造が大きく異なっていたが、これも長時間浮上しての敵海域を航行することを前提としたものだった。

 離島への補給はともかく、他の潜水艦への補給任務が追加されたのには、この当時の潜水艦隊が抱いていた、漸減邀撃作戦の一端を担うはずであった海大型潜水艦が、米海軍戦艦の高速化などによって効果が半減したのではないのかという懸念が発端だった。
 このため潜水艦隊では、艦隊型潜水艦の主力を大型高価な海大型から、戦時に大量建造される海中型に切り替えており、同時に平時から整備されるべき戦力も艦隊型ではなく、長距離哨戒や通商破壊を主任務とする巡洋潜水艦に切り替えていた。
 だが、海大型に比べると海中型潜水艦は艦形が小型な分だけ航続距離も短く、これを有効に使用するための支援用燃料補給用途の潜水艦が、今度は第6艦隊の方から要求されたのである。
 当然のことながら、戦時に急速整備される海中型を支援するために、就役時期も軍縮条約の無効化後可能な限り早い時期とされた。

 最終的には、伊351号潜は多用途に使用できる補給用潜水艦として就役しており、所属も第6艦隊直轄となっていた。
 また、燃料油のような液体ではなく、固体貨物を移送するための準同型艦として、伊361号潜も同時期に計画されていた。燃料補給による他隊への支援を目的としていた伊351号潜とは異なり、伊361号潜は輸送任務よりも陸戦隊及びその装備を移送して離島などへの隠密着上陸を念頭に置いていた。
 この任務のため、伊361号潜では陸戦隊一個中隊約160名とその装備のほか、乗り込んだ陸戦隊を迅速に揚陸させるために大発を甲板に搭載していた。場合によって搭載艇を水陸両用車両に交換することもあった。

 伊351号潜では構造上液体以外を移送することが出来ず、予備魚雷も搭載できなかったが、伊361号潜の場合は貨物庫を予備燃料槽や予備魚雷庫に転用することも可能であり、長距離哨戒任務を行う巡洋潜水艦として運用することも不可能ではなかった。






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