大隅型輸送艦





<要目>
基準排水量 15,000t   全長 216m  全幅 28m  ディーゼル 出力 26,000馬力(2軸)
速力 21ノット  乗員 400名(揚陸部隊約1,700名)

兵装
連装65口径10cm高角砲 2基
三連装25mm機銃 14基

搭載艇
大発動艇 30隻
特型大発動艇 10隻
回転翼機 20機
(排他のためいずれも最大数)

 日本陸軍が揚陸艇である大発動艇の専用母艦として神州丸を建造し、その航空艤装強化型として秋津丸を引き続いて建造したが、大発動艇自体は陸海軍の共通制式装備となっており、神州丸の建造時期から日本海軍もこれに注目していた。
 試作と言っても良い二隻に続いて揚陸艇の収納方法を大発動艇専用のレール式から汎用性のあるドック方式に変更された改型の特殊船が建造されており、日本海軍も空母同様に全通甲板を有する改秋津丸型である丙型特殊船を、常設の特別陸戦隊を集成させた陸戦師団向けに数隻建造した。

 だが、全通型の飛行甲板を有する航空母艦複数を有していた海軍にとってはオートジャイロの運用が前提の丙型特殊船の飛行甲板は中途半端な存在であり、その一方でドック面積や兵員収容人数などから揚陸艇母艦としての能力には不満を抱いていた。
 そこで、陸海軍間の協定によって大型輸送艦の運用に関して海軍が優先権を持つとの言質を得たことから、航空運用能力の代わりに艦体の大型化と揚陸艇母艦の能力強化を図った大隅型輸送艦の建造を行った。

 基本的には大隅型輸送艦は、商船規格で建造された丙型特殊船を軍用規格で再設計した上に大型化を図ったもので、一部の艤装は取得価格の低減を目的に大鯨型潜水母艦とも共通化を図っていた。
 寸法的には重巡洋艦級にまで大型化しており、排水量で一万トンを超える大型艦となったことから、従来の輸送艦との区別化などから艦名は二等輸送艦や特1号型輸送艦とは異なり番号ではなく半島名からなる固有名詞となった。

 大隅型輸送艦の一般配置は丙型特殊船を原型としたもので、主機関を配置した機関室や注排水ポンプを収めたポンプルーム、バラストタンクなどが配置された下甲板の上の中甲板が巨大な揚陸艇格納用のドックとなっており、大発動艇で30隻、特型大発動艇で10隻が収容できた。
 ドックとなる中甲板の上は前部の兵装区画、兵員区画に続いて格納庫となっており、ここは搭載機のほか貨物の収容などに使用された。
 更にその上部は甲板は飛行甲板となっているものの、全通甲板となっていた丙型特殊船とことなり、収容能力を強化するために前方は上部構造物に占められていた。

 なお、丙型に限らず特殊船の飛行甲板後端は対空火器の設置スペースなどに使用されていたが、大隅型輸送艦では上部構造物に押された為か艦体後端まで飛行甲板が進捗されたため、上部構造物上部に対空火器は移動していた。
 だが、上部構造物に移動した対空火器は、飛行甲板上の重デリックや排気筒があるために射界が制限されてしまって、対空火器の数量に比して火力は貧弱であるとの指摘があったが、大型である上に揚陸艦の母艦である大隅型輸送艦が有事に単独で行動することはあまり考えられなかったためにさして問題とは考えられなかったようだ。

 下甲板の機関室に配置された主機であるディーゼルエンジンは、上部にドックがあることから高さに制限のある機関室に収容するために、排気量の割に背を低くできるV型配置のものとなっている。
 この排気管はドックを避けて左右に分配されて上部構造物後端に配置された排気筒に誘導されている。
 左右の排気筒の間には飛行甲板に繋がる格納庫風の構造物があるが、実際にはこの内部には重エレベータが配置されており、飛行甲板から格納庫、さらにその下部の揚陸艇格納庫にまで連結されており、収容した車両や物資などを直接艦内で揚陸艇に収容することが出来た。
 当初は飛行甲板はそれほど重要視されておらず、主に車両を搭載する甲板として考えられていたのだが、大隅型輸送艦の就役に前後して輸送能力を拡大した回転翼機が採用されたこともあって、回転翼機運用能力が拡大されていた。
 最も飛行甲板や格納庫は汎用性をも追求したものであることに変わりはなく、輸送、観測、偵察などに使用される回転翼機を運用、格納する他に車両の輸送などにも使用されており、各甲板には埋込み式の固縛用アイが設けられていた。
 また飛行甲板には車両だけではなく駆逐艇などの搭載も考慮されており、搭載艇や搭載機の移送用に重デリックが搭載されていた。

 シチリア島上陸作戦から一気に複数隻の初期建造艦が実戦参加した大隅型輸送艦だったが、第二次欧州大戦後半においては強襲上陸作戦の可能性が著しく低下したことなどから、揚陸艦としての任を離れて大容量のドックや倉庫となる格納庫を活かして駆逐艇や駆潜艇などの小艦艇の母艦任務や工作艦任務に転用されることも多かった。





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