特設巡洋艦興国丸





<要目>
総トン数 10,438t   全長 160.8m  全幅 20.2m  ディーゼル 出力 13,000馬力(2軸)
最大速度 21.2ノット  乗員 228名

兵装
単装14cm砲 6基
連装53cm魚雷発射管 2基
連装13mm機銃 2基

 アフリカ経由南米航路に投入する為に大阪商船が発注した報国丸型貨客船は、対独戦の開戦と同時に海軍に特設艦艇として徴募された。建造時に海軍からの資金を優秀船舶建造助成を利用して受けていたからである。
 しかし開戦時には報国丸、愛国丸の二隻が就役しているのみであり、三番船護国丸は艤装中、四番船の興国丸は進水すらしていなかった。

 報国丸型は一万総トンを超える大型の船体と20ノットを超える優秀な速力を兼ね備えていたことから有力な特設巡洋艦として期待されていた。
 しかし興国丸のみは艦政本部によって建造が引き継がれることになり、他の同型艦とはやや異なる艦として完成した。
 英国と共同で概念研究が進んでいた指揮所および通信、電探の増設をおこなった興国丸は指揮艦とでもいうべき船となった。
 報国丸型の同型艦とは、通信及び電探のための各種アンテナ及び14cm砲の減少などの特長によって識別は容易だった。
 電探を取り付ける櫓を設置するため一部の送風管は設置位置が改変されている。こんな工事が可能だったのも進水前だったのでぎりぎりで設計改変が間に合った為である。
 また大幅に増大した必要電力量を確保する為、後部船倉にはディーゼル発電機が増設された。後部の煙突はこのディーゼルの排気と吸気専用である。

 興国丸は当初特設巡洋艦に分類されていたが、1943年のシチリア上陸作戦では揚陸司令部が設けられるなど巡洋艦の枠内では収まらない艦となったため、対独戦集結後に伴う軍備整理にあわせて新たに設けられた指揮艦に分類されている。
 指揮艦への分類と共に興国丸は海軍に買い取られて特設艦籍から離れており、艦名も鳴門と変更されている。




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