特設巡洋艦護国丸





<要目>
総トン数 11,100t   全長 160.8m  全幅 20.2m
最大速度 20.2ノット  乗員 478名

兵装
連装50口径20.3cm砲 3基
連装40口径12.7サンチ砲 2基
連装53cm魚雷発射管 2基
連装13mm機銃 2基

 第一次欧州大戦時に不足する船腹量を補うために大量建造された商船は、平時における需要を大きく上回っており、戦後は余剰となる商船が多かった。その為日本船籍の商船は次第に旧式化が進んでしまっていた。
 このような事態に対して、日本政府は一定以上の性能を有する商船の建造に助成金を交付する優秀船舶建造助成施設法案を成立させた。しかし、この法案は同時に戦時において不足する運送艦などの各種特設艦艇の母体となる補助軍用艦艇の徴用対象ともなるものだった。

 大阪商船は優秀船舶建造助成施設法案の助成金を受けて報国丸型貨客船四隻の建造を開始した。
 一万トン級の大型貨客船である報国丸型は四隻全てが就役する前に第二次欧州大戦が勃発した。そこで報国丸型四隻は揃って日本海軍に徴用されると共に優速かつ大型の船体を持つことから特設巡洋艦に改装された。
 しかし、この報国丸型四隻の内、通常の特設巡洋艦に改装されたのは1,2番船である報国丸と愛国丸の二隻だけだった。この二隻は旧式の14センチ単装砲などの倉庫に仕舞われていた予備兵器を搭載する他はさほど多くの改造を施すことはなく再就役している。
 このような特設巡洋艦は不足しがちな正規巡洋艦を補って長距離船団の直援や哨戒任務につくことを前提としていたのだが、海軍に徴用された際に未だ建造中であった報国丸型3,4番船である護国丸と興国丸はこのような一般的な特設巡洋艦とは異なる改装を受けていた。
 興国丸は大規模な司令部施設や各種電探を増設して艦隊指揮用の艦に改装されたのに対して、護国丸は特設巡洋艦としては異例なほど強力な砲力を装備する形で改装されていた。
 他の特設巡洋艦が旧式の単装砲を装備する程度であるのに対して、護国丸が装備したのは正規巡洋艦、しかも軍縮条約の制限下では巡洋艦の備砲として最大となる8インチ砲だった。

 護国丸が装備した8インチ砲は日本海軍の重巡洋艦が装備していた連装20.3センチ砲塔で、この時点での最新型であるE型、しかも有力な射撃指揮装置を持たない特設巡洋艦に搭載するために測距儀付のものが搭載されていた。
 この連装20.3センチ砲塔を搭載するために護国丸は構造材の強化のほかデリックの撤去などが行われており特設巡洋艦としての汎用性は低下していた。
 護国丸にこのような有力な砲が搭載されたのは、半ば実験艦として運用するつもりだったのだと思われる。この時期の日本海軍は巡洋艦の戦闘能力を向上させるために発射速度を高速化させる大口径砲用の半自動装填装置の開発を進めており、大型の連装20.3センチ砲塔を搭載してもなお空間に余裕のある護国丸にその試作品が搭載されていた。
 ただし、この自動装填装置は本格的な試験は陸上で行われており、護国丸で実施されたのは海上試験のみだった。

 この改造された連装20.3センチ砲塔を搭載されたこと以外は概ね護国丸は他の特設巡洋艦同様の艤装を施されており、短期間の海上運用試験後は報国丸、愛国丸と同じように船団護衛任務に従事した。
 しかしながら通常の特設巡洋艦として使用するには護国丸の改造された船体は不向きであったらしく、報国丸、愛国丸の二隻が特設巡洋艦籍から兵装等を減じて特設運送艦に転籍して運用されたのに対して、戦後は早々と廃艦となっていた。
 本来の運用者であった大阪商船でも通常の貨客船に戻すための改装費用、期間の割には戦後における商船の大型化、専門化に対応できない旧式船となってしまった護国丸の価値をさほど高く認めていなかったものと思われる。

 


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