松型駆逐艦(原型)





<要目>
基準排水量 1,150t   全長 95m  蒸気タービン 出力 25,000馬力(二軸)
最大速度 30.7ノット  乗員 198名

兵装
単装40口径12.7サンチ高角砲 1基、同連装 1基
三連装25ミリ機銃 2基、同単装 2基
四連装61cm魚雷発射管 1基
爆雷投下軌条 2列
爆雷投射機 2基
 松型駆逐艦は、近い将来における対独戦をにらんで日本海軍艦政本部が設計した量産型駆逐艦である。
 当時の日本海軍は、対艦戦闘に特化した大型駆逐艦を整備していたが、その分対艦攻撃以外の任務に安易に使える駆逐艦が存在しなかった。
 そこで松型では出来る限りコストを引き下げ、量産性を高めて数を重視する設計が行われた。
 艦尾の構造を従来艦で多用された曲線からなるクルーザースターンからトランサムスターンへと変更するなど出来る限り曲線部分を減らすことで、鋼板を切り出すだけで容易に部材を製作出来るようになっている。
 また電気溶接の多用により建造時間を短縮すると同時に軽量化に成功している。
 しかしこのように量産性を確保しながらも対潜戦闘を重視し聴音機や探信儀を装備すると共に、抗靭性を高める為にタービンとボイラーを交互に搭載するなど、実用性を高める部分では逆に工数が増大しているところもあった。
 松型駆逐艦の最大の特徴は大鯨型潜水母艦で実験的に行われたブロック構造を全面的に設計段階から取り入れていることである。
 現在では当然となっている、各ブロックを陸上の工場で建造してから船渠内で組み立てるという造船法を日本で始めて実施したのはこの松型であった。




改松型駆逐艦





<要目>
基準排水量 1,280t   全長 100m  蒸気タービン 出力 25,000馬力(二軸)
最大速度 30.1ノット  乗員 203名

兵装
連装40口径12.7サンチ高角砲 2基
三連装25ミリ機銃 2基、同単装 1基
四連装61cm魚雷発射管 1基
爆雷投下軌条 2列
爆雷投射機 2基 散布爆雷(ヘッジホッグ) 1基
 対独戦勃発と同時に日欧間長距離船団の護衛任務についた松型駆逐艦の行動実績は、多大な戦訓を日本海軍に与えた。
 特に今まで日本海軍が想定していなかった熱帯地方での戦闘は、兵員に多大な消耗を強いた。
 そこで熱帯で行動する兵員を保護する為の冷房と、駆逐艦レベルの小艦艇にも搭載が始まっていた電探を搭載した改松型が設計された。
 最終的には、この改松型が日本海軍で最も量産された駆逐艦となった。なお各種追加装備を搭載するため船体が延長されたことからこの型は船体延長型とも呼ばれた。




松型防空駆逐艦(対空型)





<要目>
基準排水量 1,270t   全長 100m  蒸気タービン 出力 25,000馬力(二軸)
最大速度 30.1ノット  乗員 206名

兵装
連装40口径12.7サンチ高角砲 3基
三連装25ミリ機銃 2基、同単装 11基
爆雷投下軌条 2列
爆雷投射機 2基
散布爆雷(ヘッジホッグ) 1基

 松型は、当初からブロックを入れ替えることで様々なサブタイプを容易に建造できるように設計されていた。
 本型はその中でも対空能力を増強したタイプである。高性能の高射装置と高角砲を搭載した対空型松型は、秋月型防空駆逐艦や防空巡洋艦の数がそろうまで主に空母部隊の直援任務を行った。
 しかし戦後高角砲の主力が完全に65口径10サンチ砲に切り替わると、時代遅れの砲しか装備していない本型は急速に陳腐化してしまうことになり、他の松型ベースの艦と違って予備艦指定を受けることなく対独戦後は急速に退役し、解体されていった。




一等輸送艦(輸送型)





<要目>
基準排水量 1,270t   全長 100m  蒸気タービン 出力 12,500馬力(一軸)
最大速度 23.1ノット  乗員 144名

兵装
連装40口径12.7サンチ高角砲 1基
三連装25ミリ機銃 1基、同単装 2基
散布爆雷(ヘッジホッグ) 1基
貨物300t、大発四隻

 松型を原設計として建造された一群の艦艇の中で、もっとも異色であるのがこの一等輸送艦である。
 もともと日本海軍は上陸作戦用機材の開発に関しては陸軍に任せていたのだが、対独戦前後から陸戦隊の強化に乗り出しており、まず陸戦隊が上陸して橋頭堡を築いてから陸軍師団が上陸するという計画が欧州での上陸作戦として立案されていた。
 そこで重装備の陸戦隊を速やかに揚陸する為に設計されたのが一等輸送艦である。一等輸送艦は、艦前部を松型と同一としながら、後部は揚陸艇を発進させる為のスロープとなっており、貨物は松型では前部機関が収まっていた位置に収納された。
 松型と比べて、一等輸送艦は貨物スペースの為に主機が半減されていたが、それでも輸送艦としては高レベルの速力を有しており、迅速に一個中隊程度の戦力を上陸させることが出来た。
 しかし完成した松型は対潜、対空を含む自衛戦闘が可能な輸送艦として重宝され、揚陸艇投下軌条に爆雷を搭載して船団護衛任務をおこなったり、前線で急速敷設艦として用いられたりと本来の用途外に使われることも多かった。
 戦後もその万能が評価されて多くの同型艦が、海軍から分離独立された沿岸警備隊である海上保安局に移管され、最後の一等輸送艦が退役したのは70年代末のこととなった。




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