鈴谷型防空巡洋艦改装型





<要目>
基準排水量 12,900t   全長 200.6m  全幅 20.4m  蒸気タービン 出力 152,000馬力(4軸)
最大速度 33.1ノット  乗員 950名

兵装
連装対空誘導弾発射器 1基
連装65口径10cm両用速射砲 11基

同型艦 最上型鈴谷、熊野改装

 1940年代後半、主要国海軍は戦艦部隊と空母部隊の二つを主軸とした戦力を整備していた。戦艦は第二次欧州大戦においても無類の威力を誇っていたし、航空機の急速な発展に伴って空母部隊は対艦、対地とあらゆる任務に対応可能な汎用部隊としてその価値を高めていたからだ。
 防空艦の随伴、あるいは自艦防空能力を高めた戦艦部隊は航空機の発展をもってしても撃沈が困難だと考えられていた。自在に戦力を発揮できる状態の戦艦を同クラスの戦艦以外で制圧するには、かなりの航空機部隊か水雷戦隊をすりつぶす覚悟が必要であり、それだけの戦力を洋上で展開可能であるのは日英米の海洋国家のみであり、それにソビエト連邦などがこれに対抗するため急速に航空、戦艦戦力を高めようとしていた。
 これらの航空戦力の脅威に対して日本海軍は、空母部隊に随伴する艦艇の増加、防空能力の付随を急速に図る必要があった。だが、日本海軍が保有する防空巡洋艦はこの頃数が限られていた。
 日本海軍は完全な洋上航空艦隊として第二艦隊を整備していたが、戦時は空母二隻を中核とした一個航空戦隊、防空駆逐艦で編制された一個駆逐戦隊、防空戦を管制する能力を持つ防空巡洋艦二隻からなる一個戦隊の計三個戦隊で一個分艦隊(米海軍の任務部隊に相当する臨時編制部隊)を編制する計画を立てていた。
 しかしこれを完全に編制させるためには一個戦隊分、二隻の防空巡洋艦が不足していた。そこで最上型で第二次欧州大戦の激戦を生き抜いた鈴谷、熊野を防空巡洋艦として改装することになった。

 航空分艦隊に配属される防空巡洋艦からなる戦隊の戦隊司令官は、防空戦闘時には分艦隊所属艦全ての対空戦闘指揮を一任されていた。そのため防空巡洋艦には、艦に搭載する対空兵器以上に戦隊司令部の範囲を超えた司令部スタッフや機材が必要だった。
 そこで防空巡洋艦に改装された鈴谷は、航空分艦隊の防空管制能力を持たせるため艦橋は大型化が図られており、主兵装も対空誘導弾発射器と両用砲に統一されている。また対空監視、管制電探も米代型と同等のものを搭載している。

 しかし大型化した上構を搭載しなおしているとはいえ、元が対艦戦闘を最優先として設計されていたため防空管制能力は当初から防空艦として設計された艦には劣っていた。また拡大された上構の為に復元性が悪く、高速の最新鋭艦との艦隊行動に支障をきたすことも多かった。
 これらの問題を抱えてきたことから鈴谷と熊野は、60年代に新型の防空巡洋艦が竣工すると米代型よりも早く二隻とも早くに除籍されてしまった。





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