尾瀬型対潜嚮導巡洋艦





<要目>
基準排水量 5,200t   全長 155.0m  全幅 16.3m  蒸気タービン 出力 80,000馬力(4軸)
速力 32.5ノット  乗員 450名
最大装甲厚 舷側 70mm 10°傾斜  甲板 40mm  主砲防盾 100o

兵装
連装65口径10cm両用砲 4基
三連装25mm機銃 4基
爆雷投射機 1基
爆雷投下軌条 2基
対潜噴進砲 2基
三連装53cm魚雷発射管 2基

同型艦 尾瀬、五ヶ瀬、留萌、高瀬、鳴瀬、以下建造続行


 尾瀬型は、日本海軍の駆逐艦運用思想の変化に伴って建造された駆逐艦部隊指揮用の軽巡洋艦である。その主な用途は駆逐隊一個乃至二個程度からなる小規模戦隊の指揮及び対潜戦闘にあった。
 第二次世界大戦後の日本海軍は、駆逐艦部隊を従来の駆逐隊三個乃至四個からなる水雷戦隊を解隊して、より小規模に駆逐隊一個乃至二個程度の駆逐戦隊へと改めようとしていた。
 欧州での戦闘でたしかに水雷戦隊による襲撃作戦は大きな成功を収めたものの、その規模が大きすぎて小規模な作戦や対潜戦闘に不都合が生じていたからである。また空母を主力とする航空戦隊が直卒する駆逐隊は逆にその戦力があまりにも貧弱であるといわれていた。
 航空艦隊編成を取った場合は大規模な護衛戦力がつくのが常ではあったが、平時においては航空戦隊単独で行動することも考えられるからである。
 そこでより小規模に再編成された駆逐戦隊を指揮するために旗艦設備を備えながらも数を揃えられる程度には小型である尾瀬型が建造されたのである。
 尾瀬型は対空、対潜戦闘を重視して設計された。主砲である両用砲は砲身は今までの長10サンチ砲と同じだが、砲塔内の配置や設備を一新した速射砲となっており、対空戦闘能力は勿論対艦攻撃能力にも優れていた。この両用砲は以後の日本海軍では標準砲とされ、駆逐艦に搭載するための単装速射砲などのバリエーションなどが生まれた。
 他に目を引く装備としては上構前後に搭載された爆雷投射砲以下の対潜兵器がある。爆雷投射砲は従来の散布爆雷の発展系として開発された新兵器であり、その性能発揮には優れた探信儀と聴音機による敵位置の正確な把握が不可欠だったが、従来の対潜兵器と比べて格段に長射程だった。

 尾瀬型は対米戦でも十二分に活躍し、戦後も長く改装され使用された。



尾瀬型対潜嚮導巡洋艦改装型





<要目>
基準排水量 5,200t   全長 155.0m  全幅 16.3m  蒸気タービン 出力 80,000馬力(4軸)
速力 32.5ノット  乗員 450名
最大装甲厚 舷側 70mm 10°傾斜  甲板 40mm  主砲防盾 100o

兵装
連装65口径10cm両用速射砲 2基
単装対空誘導弾発射器 1基
連装65口径8cm両用砲 4基
六連装対潜噴進弾発射機 1基
爆雷投下軌条 2基
対潜噴進砲 1基
三連装53cm魚雷発射管 2基

同型艦全艦改装


 尾瀬型も50年代後半にはいると指揮下の駆逐艦と争うようにして逐次近代化改装を受けた。船体や上部構造にはほとんど手を加えられず、唯一目立つ改造は対潜噴進弾発射器を装備するため、段々となっていた船首側上部構造を取り払って艦橋直前までを水平甲板としている。
 これは重く、また装備位置を高くする必要性が無い対潜噴進弾発射器をできるだけ重心近くに装備するためであった。この対潜噴進弾は、音波誘導の対潜長魚雷を噴進弾で敵潜水艦の付近まで高速に運搬する新時代の対潜兵器だった。運搬する対潜魚雷の性能向上を除けば二十一世紀になっても一部艦艇では現用である。
 両用砲は改装前から装備されているものとほとんど同様だが、砲側での測距装置が改良された新型に変更されている。両用砲の装備数は半減されており、後部の両用砲二基が収まっていた空間には単装対空誘導弾発射器とその弾薬庫が配置されている。
 これにより尾瀬型は限定的ながら防空巡洋艦としても運用することが出来るようになった。



戻る
inserted by FC2 system