遠賀型嚮導巡洋艦





<要目>
基準排水量 6,500t   全長 165.0m  全幅 16.9m  COGAG 出力(最大)80,000馬力(2軸)
速力 30.5ノット 乗員 430名

兵装
連装65口径10cm両用砲 2基
30mm多銃身機銃 3基
八連装大型誘導弾発射機 1基
連装対空誘導弾発射機 1基
三連装53cm魚雷発射管 2基
哨戒回転翼機 3機

同型艦 多数


 遠賀型は、日本海軍が70年代に老朽化が叫ばれてきた尾瀬型の後継として建造した軽巡洋艦である。尾瀬型と同様に駆逐艦部隊の指揮艦として運用することを目的としていた。
 しかし、その指揮する駆逐艦は尾瀬型建造当初とは大きく異なった艦種になってきていた。つまり大型化、汎用化である。実際、尾瀬型軽巡洋艦よりも指揮下の駆逐艦のほうが大きいものまで出てきていたほどだった。遠賀型も当時計画されていた新型駆逐艦と比べてそれほど排水量に違いはなかった。
 この頃の巡洋艦は直接的な装甲を持たず、防弾繊維製の内張を乗員保護のために艦内部に施している程度であったから、防護力も駆逐艦とさほどの違いはなかった。遠賀型では3機を運用する哨戒回転翼機も、新型駆逐艦でも小型ながら格納庫を有して1機ないし2機の運用が検討されていた。
 巡洋艦と駆逐艦を明確に区別しうる唯一の方法は指揮能力、すなわち司令部要員を収容する十分な空間と通信能力にあったが、駆逐艦部隊が構成艦の大型化に反比例して所属艦艇数が減少していたため(一隻あたりの戦力、建造価格向上のため)駆逐戦隊司令部の規模が縮小されていたためそれまでの巡洋艦と比べて司令部要員の収容人数は減少していた。(通信能力は格段に向上している)
 実際のところ遠賀型に求められていた能力は、哨戒回転翼機の複数運用による艦隊レベルでの哨戒能力をのぞけば、駆逐艦でも十分にまかなえるものであった。本型の任務は、駆逐隊の突入を自らの火力で制圧しながら援護を行うかつての軽巡洋艦のそれではなく、むしろ嚮導駆逐艦と呼ぶにふさわしいものだった。

 遠賀型は黒部型原子力防空巡洋艦の影響を受けており、黒部型で採用された巨大なフェーズドアレイレーダーを洗練、小型化した71式対空捜索電探をセンサーとする72式高射装置を搭載している。72式高射装置は優れた防空システムであり、御盾システムなどとマスメディアなどで俗称された。しかし日本海軍では72式高射装置及びその発展型に特別の愛称は付けられていない。
 72式高射装置は、当時の米海軍が採用していたタイフォン防空システムと比べると探知距離や組み合わされるタイフォンミサイルの射程などに劣っていたが、タイフォンシステムが巨大でほぼ大型艦に搭載艦が限られるのに対して、72式高射装置は信頼性が高く、小型であるため搭載艦が多く、日米海軍同規模の艦隊全体で見れば対空システムとしての性能は拮抗していると判断されていた。
 タイフォンシステムが高価であること、軍事機密から外国への売却に米国議会の許可が降りずに米ソ連合以外に採用されていないのに対して、72式高射装置、及びその発展型はローカライズされて国際連盟加盟諸国に売却されるケースも多い。
 また、現在では搭載機器の高性能化が進んだため、タイフォンシステムと72式から始まる日本海軍の高射装置との間に性能差は殆ど無いと言われている。

 なお72式高射装置は、その名に反して高射以外にも対水上索敵追尾にも用いられている。
 高射装置によって制御されるイルミネーターは対空用二基、対水上用一基が装備され、誘導弾だけではなく、砲装備の照準管制にも使用される。
 対空誘導弾発射機は連装のものが一基装備されており、艦橋下部の弾庫から再装填される。発射可能な誘導弾は対空誘導弾だけではなく、対艦、対潜誘導弾の発射も可能である。通常は対艦誘導弾は煙突間に挟まれた大型誘導弾発射機に装填されている。
 この誘導弾発射機は尾瀬型の近代化改装時に搭載された対潜誘導弾発射機とほぼ同型のものだったが、哨戒回転翼機の運用による長距離対潜戦闘法の確立に伴い、発射管数の増大と汎用化が図られたものである。
 搭載砲は従来型とさほど変わりはないが、装填速度や旋回速度が向上している改良型の両用砲を二基計四門搭載している。また誘導弾や航空機の脅威から最終的に艦を守る近接防空システムとして30mm機銃が三基装備されている。30mm機銃は艦全周をカバーするため回転翼機格納庫上部と艦橋左右に設置されている。

 遠賀型の主機関は航続距離と最高速力を高いレベルで保持するために日本海軍初のCOGAG(複合ガスタービン+ガスタービン)艦となっている。主機関はロールスロイス=川崎重工業製、石川島播磨重工業製の2機種が採用されている。
 COGAG艦とはいうものの、ガスタービン2機種はかなり出力が異なっており、実際の運用ではCOGOG艦のように巡航時、高速時、戦闘時と切り替えることで燃費の向上が図られているといわれている。
 



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