高津型防空巡洋艦後期型





<要目>
基準排水量 8,100t   全長 185.0m  全幅 16.9m  COGAG 出力(最大)80,000馬力(2軸)
速力 30.0ノット  乗員 400名

兵装
単装65口径8cm両用砲 1基
30mm多銃身機銃 2基
垂直誘導弾発射機 2基120セル
三連装53cm魚雷発射管 2基
哨戒回転翼機 1機

同型艦 多数


 高津型は遠賀型と同様に90年度建造艦より後期型に移行した。前期型と後期型の差異も遠賀型と同様にフェーズドアレイ方式の85式高射装置の採用とミサイル発射機のVLS化である。
 遠賀型ではVLSに対潜、対艦、近距離対空誘導弾をバランスよく搭載するが、高津型では長距離対空誘導弾が主であり、個艦防衛用の短距離誘導弾と対艦、対潜誘導弾は自衛戦闘が可能な程度の少数しか搭載しない。
 そのため85式高射装置も長距離対空誘導に最適化しており、噴進弾を誘導可能な照射距離は遠賀型に搭載されているものよりも長くなっている。
 90年代に入ってから米海軍による対艦弾道弾攻撃、あるいは北中国による日本海を超えた大陸間弾道弾による本土攻撃への脅威が盛んに叫ばれるようになっており、高津型も後期建造型からはイルミネーター及び高射装置のプログラムに改良を加えることで弾道弾の成層圏迎撃が可能となっている。
 しかし成層圏迎撃任務に付いている際の高津型は、イルミネーター及び捜索電探のビームを絞って高空を航過する弾道弾に指向することで迎撃可能距離を飛躍的に向上させているのだが、電探のビームが絞られている以上は低空の広範囲の捜索が不可能となっており、航空機や通常のシースキマータイプの対艦誘導弾に対して無防備となってしまう。
 このため成層圏迎撃任務につく場合は護衛につく僚艦の存在が必要不可欠であり、後期建造型の高津型は、事実上空母の直衛のみが任務であった前期建造艦の頃とは違って、護衛の駆逐艦などを従えて戦隊を組むことも多かった。

 遠賀型と比べると高津型の前期型と後期型の変更点は少なくない。
 従来型イルミネーターの廃止と固定化、ラティスマストからRCSの低減を狙った単マストの採用、また、遠賀型同様に誘導弾発射機はVLSとなっている。
 これらは遠賀型の設計変更とほぼ同様であるが、高津型の場合、単純に誘導弾発射機を前期型の配置のままVLS化することが出来なかった。
 本来であれば前部の二基、及び艦尾の一基の誘導弾発射機がある位置にVLSを埋め込めればよかったのだが、高津型の場合、艦尾の3番発射機の下部には舵機室が配置されていたため下部に広い空間を必要とするVLSを埋め込むような設計が不可能だったのである。
 1,2番発射機は下部に弾庫があったため設計上もVLS化は容易だったが、3番発射機はヘリ甲板の下部後方に弾庫が設けられていた。
 当初このヘリ甲板を後方に延長し、3番発射機のあった空間その分をVLSとする案もあったのだが、その場合、舵軸へのアクセスホールがVLSによって防がれてしまうため整備工事の工数が格段に跳ね上がることが予想された。
 結局高津型後期建造艦では艦体後方の設計を大きく見直し、ヘリ格納庫を含む航空艤装そのものを後方へと移設し、ヘリ格納庫前側の上部構造物にVLSを埋め込んでいる。
 だが、後方へ延長されたとはいえヘリ格納庫の前後長は減少しており、主力哨戒回転翼機である川崎−シコルスカヤ80式を従来通り格納することが出来なくなっている。このため、80式は一旦着艦拘束装置によって着艦した後、機体をやや左右にまげて斜めにしてから格納庫に収納するようになっている。
 なお、ヘリ格納庫こそ縮小されてしまっているものの、ヘリ甲板が後方に延長された分だけ、ヘリ甲板下部の空間も拡大されているので艦内容積は逆に増えている。

 高津型の建造が後期型に移った後は、遠賀型同様に前期建造艦を後期型と同様までアップデートする計画も立てられたが、遠賀型と違い高津型は誘導弾発射機およびイルミネーターを当初より複数搭載しているため前期建造型でも十分な同時管制能力を有していると判断されたこと、また艦尾構造を前期型から後期型へ改修を行うとかなりの工数となるため前期型の大規模近代化改装は今のところ実行される計画は実行されていない。
 一時期前期型の艦前半部のみを後期型相当に改装し、ヘリ甲板後部の発射機は撤去するという折衷案のような改装案が検討されたようだが、これは検討のみで終わったらしく短時間で報道から消え去っている。
 日本海軍は、高津型前期建造艦を無理をして後期型相当へと近代化改装するよりも、前期型の陳腐化が起こった時点で次世代型の防空巡洋艦を新たに建造した方が戦力ギャップやトータルコスト削減の面で優位であると判断しているようである。


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