レキシントン級巡洋戦艦



レキシントン級巡洋戦艦就役時

レキシントン級巡洋戦艦改装後


<要目>
基準排水量 41,500t 全長 265.5m 全幅 32.2m  蒸気タービン 出力 180,000馬力(4軸)
最大速度 33ノット  乗員 1250名
最大装甲厚 舷側 178o  甲板 64o  主砲防盾 280mm  司令塔 300mm

兵装
連装45口径16インチ砲 4基
単装53口径6インチ砲 16基
単装50口径3インチ高角砲 4基
(就役時)
連装45口径16インチ砲 4基
単装53口径6インチ砲 6基
連装38口径5インチ砲 6基
四連装40mm機銃 12基
(改装後)


一番艦 レキシントン
二番艦 サラトガ

 レキシントン級巡洋戦艦は、第一次欧州大戦終結後に建造が開始された米海軍唯一の巡洋戦艦にカテゴリー分けされた艦艇である。設計の開始は大戦勃発直後の1916年のことで、当時の列強各国の海軍で就役されていた巡洋戦艦に強い影響を受けて建造計画が持ち上がったものであった。
 巡洋戦艦はこの当時各国で戦艦につぐ準主力となってはいたが、戦艦と違ってその設計思想には差異が大きかった。戦艦級の主砲を備えた高速艦という前提は同一ではあったが、イギリス式は装甲を抑える代わりに速力を高めており、ドイツ式は重装甲の戦艦寄りの艦艇だった。
 参戦主要国の設計思想がこのようにばらばらであったから、米海軍初の巡洋戦艦となるレキシントン級の設計も二転三転して、建造が開始された時には大戦は終結していた。

 レキシントン級の設計は概ね英国式と言ってよく、最新鋭戦艦が装備する16インチ級砲を備えたにも関わらず、装甲は8インチ級砲程度にしか対応できない弱体なものだった。その代わり速力は極めて高く、巡洋艦並みの高速を発揮出来た。
 この英国方式の防御力軽視の思想は、大戦中の戦訓から否定されており、英国海軍のフッド級や日本海軍の新鋭戦艦は、装甲の強化を中心とした大幅な設計変更や計画の中止が行われていたが、第一次欧州大戦に最後まで参戦しなかった米海軍では十分な戦訓の分析が行われなかったことから、このような旧式の設計方針での建造が実施されたと考えられる。

 大戦後に締結された軍縮条約は、巡洋戦艦を含む戦艦カテゴリーの制限排水量は三万五千トンに制限されていたが、レキシントン級巡洋戦艦は強引にフッド級同様の特例として廃艦を免れていた。
 その代わりにアメリカは日本海軍の長門型戦艦二隻の就役、英海軍の16インチ級砲戦艦の新造を認めざるを得なくなり、また後の日本海軍の対米四割への保有枠拡大の遠因ともなった。
 軍縮条約締結の際に、建造途中にある主力艦を航空母艦へと改装されることが認められた。日本海軍ではこの規定を利用して巡洋戦艦として建造されていた赤城、天城の二隻を大型航空母艦へと改装したが、米海軍でも高速、弱装甲のレキシントン級を航空母艦へと改装する案が検討されたが、この案は否定されて、結局コロラド級戦艦のコロラド、メリーランドの二隻が航空母艦へと改装され、その他のコロラド級二隻は廃艦となった。
 コロラド級は、レキシントン級と同じ45口径16インチ砲8門とそれに対応した装甲を装備した有力な戦艦だったが、米海軍が保有を選択したのはレキシントン級だった。
 この背景には、ユトランド沖会戦にも参戦した日本海軍の金剛型巡洋戦艦の戦力を米海軍が高く評価していたためだと考えられる。英国海軍方式の巡洋戦艦として建造された金剛型は、戦艦級の14インチ砲を8門も装備しながら、27ノット強という高速力を発揮することが可能であり、もしもこれが太平洋戦域で通商破壊作戦などを実施された場合、巡洋戦艦を保有せず、戦艦群も軒並み低速度であった米海軍では対応できないと考えられたのである。
 ユトランド沖海戦において、金剛型四隻他で編成された特務艦隊は、ドイツ海軍の巡洋戦艦と交戦、少なくとも一隻を撃沈していた。この実績を米海軍は重要視していたのであろう。

 対金剛型巡洋戦艦の切り札として就役したレキシントン級だったが、米海軍に対して劣勢にあった日本海軍が金剛型を順次改装して防護力、速力を強化していったのに対して、米海軍は改装工事には熱心ではなく、軍縮条約が破棄されるまで就役時とほぼ変わらない要目を保っていた。
 だが、無条約型の新鋭戦艦が続々と就役するのに揃えるように、レキシントン級も大規模な近代化改装が実施された。これは同時期に行われた旧式戦艦群の改装とほぼ同一の内容で、この時期、艦橋を全天候性を重視して閉囲させるとともに、既に欠点が明らかとなっていた籠マストに代わって塔型マストを装備し、単装副砲を削減する代わりに高角砲を兼用する両用砲などの対空兵装を強化していた。
 なお、レキシントン級はその弱体な防護力の強化も一時期検討されていたが、装甲の強化はそのまま重量増につながり、速力を維持するためには、金剛型のように機関の改装も同時に行う必要があった。
 しかし、レキシントン級の改装工事が決定された頃、既に実質上は同級の後継となるアイオワ級戦艦の建造計画が立案されており、砲力で少なくとも同等、防護力では格段に強力であることから、レキシントン級は最低限の安価な改装のみが実施されることとなっていた。
 





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