石鎚型重巡洋艦





<要目>
基準排水量 18,800t   全長 213.0m  全幅 22.3m  蒸気タービン 出力 120,400馬力(4軸)
速力 33.5ノット  乗員 1650名

兵装
三連装55口径20.3cm砲 4基
連装65口径10cm高角砲 8基
四連装61cm魚雷発射管 4基
三連装25mm機銃 8基
連装13mm機銃 2基
対潜散布爆雷 2基

同型艦 石鎚、六甲、吾妻、剣、大雪、鞍馬、笠置、阿蘇

 石鎚型は、軍縮条約の無効後に米海軍が、続々と就役させていたポスト条約型巡洋艦群に対抗するために日本海軍が建造した重巡洋艦である。
 その最大の特徴は、それまでの日本海軍巡洋艦とは比べ物にならないほどの重装甲である。これは地中海での戦闘で重武装、軽装甲の従来型の巡洋艦が多数撃沈されたことからの戦訓を受けてのものである。装甲は完全に八インチ砲に対応する重厚なものが垂直、水平ともに施されている。また単純な装甲厚だけではなく、被弾時に備えて魚雷発射管非使用時には、空母舷側エレベーター同様の装甲シャッターが設けられるなどの改良もおこなわれている。
 打撃力もそれまでの重巡洋艦よりも向上している。主砲である20.3サンチ砲は、三連装砲塔を四基で計12門装備している。これは前級である伊吹型重巡洋艦と門数では同等だが、新開発された半自動装填装置による高い発射速度と長砲身による高初速を誇っており、投射量と一発あたりの打撃力共に従来型重巡洋艦を大きく上回っている。さらに射撃管制電探の搭載は主砲と高角砲の双方に高い命中精度を与えた。
 これに加えて、米海軍の重巡洋艦では被弾時の誘爆などを恐れて装備していない魚雷発射管は、石鎚型にとって大きなアドバンテージとなっていた。石鎚型にやや遅れて採用された音響追尾式の長魚雷が戦艦の射程にほぼ匹敵する距離からの魚雷攻撃を可能としたからである。

 石鎚型は竣工後は空母艦隊の護衛や水雷戦闘時における前衛、重巡洋艦以下の艦艇との砲撃戦などあらゆる任務に参加し、その優秀性を遺憾なく発揮した。
 就役直後は、砲撃力よりも防空力に優れた艦を求める傾向があったために石鎚型の有効性が疑問視されていた時期もあったが、対米戦では重装甲であるため戦艦以外のあらゆる艦と安心して戦える万能艦として重宝されることになった。
 対米戦後も石鎚型はその手頃な砲撃力や充実した指揮能力をかわれて対地砲撃や小規模の分艦隊旗艦などに重宝された。現役を離れた艦も長くモスボール化されて予備役指定を受けており、最終艦が除籍されたのは1990年代に入ってからのことだった。





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