高雄型重巡洋艦鳥海



鳥海1942年マルタ島沖海戦時

鳥海1943年シチリア島上陸戦時


<要目>
基準排水量 11,500t   全長 203.8m  全幅 20.4m  蒸気タービン 出力 130,000馬力(4軸)
最大速度 35.5ノット  乗員 750名(改装後850名)

兵装
連装50口径20.3cm砲 5基
連装40口径12.7cm高角砲 4基
連装61cm魚雷発射管 4基
(1942年)
連装50口径20.3cm砲 4基
連装65口径10cm高角砲 6基
三連装25mm機銃 9基
(1943年)

 日本海軍が条約型重巡洋艦として特に旗艦設備を重要視して建造した高雄型重巡洋艦の一隻として就役した鳥海は、マルタ島沖海戦において損害を被った。同海戦における日本海軍全体の損害は大きく、同型艦四隻が揃って参加した高雄型重巡洋艦も高雄と愛宕を喪失して残るは摩耶と鳥海の2隻となっていた。
 だが、もともとは同型艦として艦型の違いも少なかった鳥海と摩耶は、同海戦の損害の大小からその後全く違った姿に変わることとなった。

 マルタ島沖海戦では夜襲を決行した雷撃部隊の中でも、敵主力艦に対して襲撃を刊行する水雷戦隊を援護するために、敵巡洋艦群と交戦した巡洋艦戦隊に大きな損害が発生していた。
 2個戦隊8隻の内半数が撃沈された重巡洋艦戦隊は、残存艦の修復工事を急ぐとともに戦隊の再編制を実施した。
 高雄型の内、摩耶は損害が大きく残存した他の重巡洋艦や戦艦とともに日本本土やシンガポール、コルカタといった英国海軍の拠点などに後退して損害復旧工事を行うと共に、従来の2個から1個戦隊に集約された重巡洋艦戦隊の旗艦と新たに編成された第一航空艦隊隷下の巡洋艦分艦隊の旗艦を兼ねて遣欧艦隊に再配属されていた。
 摩耶の場合は電探や対空火器を更新する他はこの損害復旧工事は概ね旧状態に修復する形で行われたが、鳥海は別の形で修復工事が行われた。

 鳥海の損害は摩耶と比べると少しばかり事情が異なっていた。主に上部構造物の一部に損傷を被った鳥海は対艦兵装の主力である魚雷発射管のすべてを喪失したものの、主砲発射能力に大きな支障はなかった。
 この当時、マルタ島沖海戦において枢軸軍主力は戦力を減衰させていたものの、北アフリカ戦線は両軍が一進一退を争っており、海軍も艦砲射撃等の対地支援攻撃を求められていた。
 そこで魚雷発射管を喪失したものの、被弾した三番砲塔以外の主砲発射能力を保持していた鳥海は、主砲身が射耗していた戦艦比叡とともに応急修理のみで現地に留められており、この処置は直後のエル・アラメインをめぐる攻防戦でこの二隻を主力とする艦砲射撃群によってドイツ北アフリカ軍団の進撃が粉砕されたことでその正しさが証明された形となった。

 しかし、応急処置で前線に鳥海が留められていた間に重巡洋艦をめぐる状況は変化を見せていた。
 マルタ島沖海戦において雷撃を主任務とする軽快艦艇の機能の見直しが進められていた結果、海戦集結直後から半ば条件反射的に損害復旧工事を進めていた摩耶以下がほぼ旧状態に戻されたのに対して、鳥海が大修理に入るころには魚雷兵装の復旧について疑問が抱かれ始めていたのである。
 また、この時期に第一航空艦隊の旗艦が要求されたことから鳥海は艦隊旗艦用として新たな姿となる改装を受けることとなった。改装内容は多数の司令部要員を収容することを前提とするもので、甲板室の拡大が図られていた。
 拡大された遮楼甲板は司令部施設や増員された要員の居住区などに転用された。遮楼甲板に装備されていた魚雷発射管も再度搭載されることなく撤去されたままだった。

 上部構造物の拡大は徹底したもので、損害を受けていた第3主砲塔、及び搭載機の格納庫は完全に撤去され、射出機も左舷側が撤去されて右舷側のみが残された。右舷側射出機も拡大された甲板室に干渉するため射出方向は右舷前方に限定されていた。
 当初は航空兵装を完全に撤去することも考えられたが、連絡機としての運用を考慮して射出機一基のみが残された。通常の運用機は三座の零式水上偵察機が搭載されていたが、格納庫がないため待機場所は射出機上に固定とされたためか運用性、整備性は悪かったようである。

 砲雷兵装は、艦隊旗艦が戦闘に巻き込まれた際に敵軽快艦艇と戦闘が可能な程度という自衛戦闘を目的としたものに抑えられており、主砲は連装砲塔4基計8門となっていた。
 撤去された第3砲塔の他に変更はなかったが、背負式に配置された第2、4砲塔が甲板室に囲まれて構造的に強化されたせいなのか、大改装後は最前線で戦闘を行う艦では無くなったにもかかわらず、皮肉なことに散布界は狭まった優秀な値を示していた。
 雷装は撤去されたものの、航空機の発展を受けて対空兵装は逆に強化されており、この時期の日本海軍の主力対空機銃だった三連装25ミリ機銃座が増設された他、従来装備していた12.7センチ高角砲も新型の長10センチ砲に換装された上で前甲板には2基が増設されていた。




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