ボルツァーノ級航空重巡洋艦




ボルツァーノ級重巡洋艦(就役時)



ボルツァーノ級航空重巡洋艦(改装後)



<要目>
基準排水量 11,100t   全長 197.0m  全幅 20.6m  蒸気タービン 出力 150,000馬力(4軸)
速力 35ノット  乗員 725名(760名:航空巡洋艦改装後)

兵装
連装53口径203mm砲 4基
連装47口径100mm高角砲 8基
単装39口径40mm機銃 4基
連装13.2mm機銃 4基
連装533mm魚雷発射管 4基
水上機 3機
(就役時)

兵装
連装53口径203mm砲 2基
連装47口径100mm高角砲 4基
単装39口径40mm機銃 2基
連装533mm魚雷発射管 4基
水上機 11機
(航空巡洋艦改装後)

 従来より正規空母の代替として、水上戦闘機アストーレの母艦となる水上機母艦ファルコを運用していたイタリア海軍だったが、マダパン岬沖海戦において、このファルコが英国海軍の航空攻撃によって撃沈されたことはイタリア艦隊にとって大きな痛手となっていた。
 これにより洋上で艦隊防空を行う航空戦力を展開する能力を喪失してしまったからである。そのため、従来より要求されていた正規空母の建造順序が急遽繰り上げられると同時に、ファルコの代艦となる水上機母艦の建造も模索された。
 その結果、純然たる水上砲雷撃戦用巡洋艦であったボルツァーノが、水上機を多数搭載する航空巡洋艦として改装されることとなった。

 この改装工事は、ボルツァーノが、ファルコが撃沈されたマダパン岬沖海戦において、やはり大きな損害を被っており、その損害復旧工事を兼ねて行われたものだった。
 また、同海戦において、原型が客船であるため、軍艦と比べると比較的脆弱な商船構造で建造されていたため、軍用艦としての改装工事においてある程度の補強工事がなされた後も構造そのものが脆弱であったファルコが容易に撃沈されたことから、艦隊随伴型の航空機運用艦は、軍艦構造の正規軍艦としなければならないという戦訓があったため、重巡洋艦であった本艦がアストーレ母艦として選択されたのだろうと考えられる。

 その改装工事の内容は、主に損害を受けた第3,4砲塔を取り払って空いた空間に水上機を係止するための飛行甲板を備えたもので、かつての主砲塔下部及び弾庫、火薬庫は搭載機用の燃料タンクや弾薬庫、航空機整備室などに充てられていた。
 それ以外には、搭載機数が少なく、その性能もこの時期には敵新鋭機に劣っていたアストーレを効率よく運用するために、後部マストには敵機の警戒にあたる長距離対空レーダーが装備されており、マスト基部にはその管制を行うレーダー室が増設されていた。
 しかし、肝心の航空艤装は多数の水上戦闘機を運用する空母代艦として適切とは言いがたいものだった。マダパン岬沖海戦の損害を免れたカタパルトや後部マストに備えられていた水上機収容、カタパルト設置などに使用するデリックは、少数の搭載機しか無かった重巡洋艦時代のものがそのまま搭載されていた。
 これは改装工事の工期短縮と工数低減を行う為の処置であったと考えられるが、格納庫内のレールと連結して速やかに搭載機を発進状態に移行できる三基ものカタパルトを備えたファルコと比べるとあまりに貧弱だった。

 イタリア海軍に欠けていた洋上航空戦力を展開させる空母代替として再就役したボルツァーノだったが、その搭載機である水上戦闘機アストーレが42年時点では予想以上に陳腐化していたこと、ボルツァーノ自身の航空艤装が貧弱であったことなどから期待されていた防空任務に就くことは難しかった。
 そもそもこの時点では、度重なる戦闘の損害によって、アストーレを用いて防空援護をするべき主力艦隊そのものが非稼動状態にあった。
 結局、ボルツァーノは、当初の想定とは異なり、洋上防空用の航空巡洋艦としては運用されず、単発単座のアストーレに向いているとは言いがたい対潜哨戒を含む海上護衛作戦に投入されていた。





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