モンタナ級戦艦





<要目>
基準排水量 63,500t(ルイジアナ以降68,600t) 全長 297.0m 全幅 32.6m(ルイジアナ以降37m)  蒸気タービン 出力 212,000馬力(4軸)
最大速度 30.5ノット(ルイジアナ以降28.9ノット)  乗員 2300名
最大装甲厚 舷側 406o 19°傾斜  甲板 150o  主砲防盾 490mm  司令塔 460mm

兵装
三連装50口径16インチ砲 4基(SHS)
連装54口径5インチ砲 10基
四連装40mm機銃 16基
水上機 3機


一番艦 モンタナ
二番艦 オハイオ
三番艦 メイン
四番艦 ニューハンプシャー

以下改設計艦
五番艦 ルイジアナ
六番艦 ワイオミング

 1940年前後、米国は戦艦戦力の大幅な刷新に着手していた。北米大陸をはさんだ両洋に存在する日本、ロシアとイギリスという海洋帝国国家群に敵対勢力として対峙しなければならなかったからである。
 そして、軍縮条約に縛られていたノースカロライナ級から第二次欧州大戦によって無条約となったころに建造されたサウスダコタ級、アイオワ級までわずか数年で一気に倍近い戦力が両洋に浮かべられたのである。その建造速度は日米露他の国際連盟諸国の心胆を寒からしめるに十分だった。
 国際連盟諸国はまずドイツの通商破壊作戦に対抗するため軽快艦艇や対潜空母を優先して建造しなければならなかったため、この時期の戦艦や重巡洋艦などの重装備はさほど優先準備が高くなく、戦艦保有数において米海軍は他を圧倒するようになっていた。

 だが、数的優勢を確保するその一方で、一気にアイオワ級まで巨大化していた米戦艦は一種の袋小路に入り始めていた。それはパナマ運河による船体寸法の制限である。アイオワ級の時点で、すでに米戦艦はパナマ運河を通過できる全幅ぎりぎりまで船体を広げていた。そして次世代型戦艦はアイオワよりもさらに巨大となるであろうことがわかっていた。
 しかし両洋で有力な戦艦部隊を保有する海洋国家に対峙しなければならない米海軍にとって、パナマ運河通過は戦略的機動性を確保する上で必要不可欠な能力だった。
 そこで米国海軍は新戦艦のためにパナマ運河を拡充するというある意味で本末転倒とも言える計画を考案した。計画では新閘門完成後は全幅50メートル程度までの艦船が通過できるようになっていた。

 だがこの計画は議会によって承認されることはなかった。膨大な費用をかけてパナマ運河を拡充しても新たに通過できるようになるのは新戦艦だけなのである。現状において両洋を往復する大型商船は一万トン程度でしかなく、米国の主な海上通商路が大西洋を横断する対ソ連へのものである以上は、パナマ運河を通過する商船が近い将来に現在の規格で対応できないほど大型化するとは考えられなかった。
 わざわざ戦艦のためだけにパナマ運河を拡充する予算は捻出出来ないため、従来戦艦の量産を行うべきと議会は海軍に勧告した。当時ハリネズミのような武装国家と諸外国にいわれた米軍の戦備体勢であったが、予算や議会縛られるという点では、ある意味戦時中の国際連盟側よりも制約が多かったようである。

 モンタナ級戦艦はこのような妥協の産物として誕生した。その原型となったのはアイオワ級だったが、むしろ設計思想としてはかつてテイルマン上院議員が提唱していた試案に近かった。つまりパナマ運河を通過できる最大サイズの戦艦である。
 アイオワ級と比べると全長が閘門制限ぎりぎりまで引き伸ばされており、同級と同じ機関を採用しているため30ノットという十分以上の速力を有している。また兵装はアイオワ級で採用された三連装50口径40センチ砲を一基多い四基十二門搭載する大火力を有していた。
 それ以外はアイオワ級と同等の艤装が施されていた。建造時期はアイオワ級の後期建造艦イリノイ、ケンタッキーと同時期であり、設計も両艦に似通った部分が多い。

 かくして洋上に浮かべられたモンタナ級は、同時期に日本海軍が建造した大和型をも上回る最強戦艦であると米国内外に広く報道された。だがこれはあくまでも議会や国民への宣伝に過ぎなかった。
 実際はモンタナ級のあまりにも長すぎる船体は凌波性や動揺性能に深刻な影響をもたらしていた。それゆえに大型砲の射撃プラットフォームとしてはあまりにも不適切であり、その自慢の重武装も荒天時には宝の持ち腐れとなりかねなかった。

 モンタナ級は四隻が建造された時点で前述の欠点を是正するため設計改変が公表されたが、これは実質上新設計とかわらなかった。全幅を拡大された五番艦ルイジアナ以降はルイジアナ級と呼称されることがおおかった。
 






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