戦艦アルザス





<要目>
基準排水量 42,000t   全長 248.0m  全幅 36m  蒸気タービン 出力 150,000馬力(3軸)
最大速度 29ノット  乗員 2000名
最大装甲厚 舷側 320o 0°傾斜  甲板 110o  主砲防盾 325mm

兵装
連装45口径38cm砲 4基
連装45口径10cm高角砲 12基



 第二次欧州大戦が終結した時点でフランス海軍は全ての戦艦を失っていた。開戦前に就役した艦艇の多くは本土を有するヴィシー政権軍に所属して国際連盟軍との戦闘の矢面に立たされていたからである。
 一方国際連盟軍に組みした自由フランス軍は有力な艦艇を持たず、大戦中は日英から供与された駆逐艦による船団護衛が専らの任務だった。
 しかし、終戦時にフランス本土のブレストには一隻の戦艦が残されていた。戦時中に同地を母港としていたドイツ海軍の戦艦ビスマルクが終戦間際に行われたレジスタンスの破壊工作の影響で出港できなかったのである。また、停戦協定によればドイツ本土に移動できないドイツ海軍の艦艇はその場で接収されることとなっており、協定に従って国際連盟軍はビスマルクを接収したのち、自由フランスとヴィシー政権が合流したフランス政権に引き渡していた。
 ビスマルクの出港がレジスタンスの破壊工作によって不可能であったことから、戦後もドイツ海軍は抗議を行っていたが講和成立を優先するドイツ政府は消極的であり、むしろ賠償金の肩代わりとでも思っていた節があった。対ソ戦終結後、最終的に戦艦ビスマルクはフランス海軍に引き渡されていたのである。

 ビスマルクを入手した新生フランス海軍は、大型戦闘艦の不足からこれに所要の改装を施して正式に艦隊に編入することを目論んでいた。開戦前に仮想敵としていたイタリア王国海軍は対ソ戦線の最前線に並ぶ友軍となってはいたのだが、国際連盟内の戦力バランスからフランス海軍も相応の戦力保有を求められていたからだ。
 アルザスと名を改められたビスマルクは、戦時中にレジスタンスによって破壊された箇所を修理するとともに大幅な改装が行われた。改装の主要点は主砲の換装だった。副砲の全廃と高角砲のフランス製への換装も行われていたが、副砲の廃止は主砲換装に伴う重量対策という面もあった。また、改装工事には本来アルザスと命名されるはずだったリシュリュー級の発展型に使用されるはずだった機材が多数流用されていた。
 換装された主砲もリシュリュー級に搭載されていたものと同型だった。リシュリュー級はダンケル級同様にこれを四連装砲塔に収めていたのだが、ビスマルクの船体に砲塔を収容するためにアルザスでは連装砲塔に改められていた。
 元々リシュリュー級の四連装砲塔は中央に損害極限を目的とした装甲板による仕切りを設けたものであり、アルザスではこの仕切の箇所から分割したような構造とされていた。主砲そのものの構造は概ねリシュリュー級と同様のものであったが、戦時中も細々と研究が続けられていた装薬の改良もあって初速が向上しており、原型となったビスマルクを凌駕する威力を有していた。
 その一方でフランス海軍の思想からすると艦首尾線に4基も並べられた連装砲塔は防御面からも効率が悪いと映っており、軽快艦艇に対処するための有力な副砲が装備出来なかった事もあって問題視されていた。
 また、排水量に余裕がなかったことから防御面は主砲塔を除いて強化を行う事が出来なかったことから結果的に火力とつり合いが取れておらず、悪い意味で艦隊内からは巡洋戦艦と揶揄される事が多かったようである。



戻る
inserted by FC2 system