剣崎型給油艦





<要目>
基準排水量 10,000t   全長 152m  全幅 22m  ディーゼル 出力 12,000馬力(2軸)
速力 20ノット  乗員 232名

兵装
連装65口径10cm高角砲 2基
三連装25mm機銃 4基


 軍縮条約下で空母機動部隊の整備を行った日本海軍は、第一次欧州大戦後に旧ドイツ領の南洋諸島が日本帝国の委任統治領となって行動圏が拡大したことなどから、艦隊の長期間の行動を支援するために支援用の給油艦などの戦時増備計画を立案していた。
 支援用の艦艇は、その大半が弾薬の輸送を行う給兵艦及び燃料の輸送を来なう油槽艦であり、戦時中こそ多数が必要とされるが平時の必要性は薄いために戦時標準規格船や徴用船を転用する計画だった。
 その中で唯一軍艦構造の特殊構造の専用艦として建造されたのが空母支援用の給兵艦兼給油艦として建造された一連の給油艦だった。艦艇用燃料となる重油に対して、航空機燃料である軽質油は揮発性が高く、粘度、発火点が低いために専用の貯油槽や配管類が必要であったためである。
 また、徴用船を転用しようにも民間では航空機燃料輸送用の船舶など存在しないため専用構造の給油艦が必要であったのも理由であった。
 この艦種は弾薬を輸送する給兵艦を兼ねており、換気施設や消火装置を完備した航空機燃料油槽に加えて、機銃弾、爆弾、魚雷等の兵装に加えて発動機などの予備品の輸送も行う万能艦だった。

 まず1個航空戦隊となる中型空母2隻を支援する洲埼型が建造されたのに続いて、大型空母2隻を支援対象とする足摺型が建造された。引き続いて足摺型あるいは洲崎型の同型艦の建造が計画されていたが、日本海軍の欧州への派遣が本格化することから事前の想定以上に支援能力が要求されたため、足摺型よりも大型の剣崎型給油艦が建造された。

 剣崎型は巡洋艦並に巨大化した艦体を持つ大型の給油艦だったが、燃料槽や貨物庫の拡大こそあったものの、機能上の差異は無かった。ただし、支援対象となる空母や倉庫内の航空機予備品などの大型化が予想されたために、20トンデリックが前後二箇所に増設された他、接舷作業用に搭載される防舷物の搭載定数は増大していた。
 防空火器の搭載数はほとんど変化がないが、前後に分割されて搭載された高角砲塔は建造時期の差を反映して旧式の連装12.7センチ砲から、当時の日本海軍で標準的に搭載されていた長砲身連装10センチ砲塔とされており、電探連動の射撃指揮装置も前後1基づつ搭載された。
 対空捜索用電探などと併せて対空火器が充実していたのは、空母部隊と共に敵軍制圧圏内まで進出することを想定していたと考えられる。

 空母機動部隊に随伴するために高速を要求されたたため、エンジン出力は足摺型に倍する一万二千馬力に達したが、搭載エンジンそのものは三菱製の同型三千馬力ディーゼルエンジンだった。
 軸数は足摺型と同じ2軸であったため2基の減速機にそれぞれ2基づつのエンジンを連結させるマルチプルディーゼルとなっておりカタログスペックは軸馬力ではなかった。
 この機関方式は大出力エンジンの新規開発の手間を省くためということに加えて、当時建造中だった戦艦信濃において採用されたマルチプルディーゼルエンジンの試験を兼ねていたものと考えられる。

 剣崎型以前の空母部隊支援用の給油艦は、第二次欧州大戦序盤では航空戦隊の活動域が北アフリカ沿岸に限られていて長時間の行動がなかったために、充実した対空兵装や速力をかわれて、水上機母艦などど共に高速輸送艦として運用される場合が多かったが、剣崎型は就役時期が大戦中盤となり、本格的な欧州大陸への反攻作戦開始時期と重なったことから、本来用途通りの空母部隊支援に使用される場合が多かった。





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