零式艦上戦闘機(33型)




零式艦上戦闘機33型


<要目>
全幅11m 全長9.1m 自重2.3トン 乗員1名 武装20ミリ機銃×2(翼内×2)、13.2ミリ機銃×2(翼内×2) エンジン出力1560hp×1 最大速度570km/h 航続距離2,620km


 英国本土防空戦を初陣として戦線に投入された零式艦上戦闘機は、初期生産型であった21/11型に続いて、エンジンを当初から予定されていた千馬力超の栄21型に換装した22型の生産開始で、一応の完成をみていた。
 零式艦戦22型は、当時の独伊(後に仏)の主力戦闘機に対して速力にはやや劣るものの、旋回半径などの機動性能はそれらに対して勝っており、概ね互角に戦うことができていた。

 しかし、敵戦闘機部隊に対して、機体性能上では少なくとも拮抗していた日英の戦闘機部隊に対して、1941年末から1942年初頭にかけて戦線に投入され始めたドイツ空軍の新型空冷エンジン搭載型戦闘機であるFw190Aの高い性能は、大きな衝撃を与える事となった。
 幸いなことに出現当初のFw190Aはトラブル続きで、初期の障害が解消された1942年初頭になっても、独ソ戦が開始されたことからドーバー海峡や北アフリカ戦線に投入された機数は少なく、個々の戦闘はともかく、戦局に大きな影響を与えるまでには至らなかった。

 このFw190Aの脅威に対して、英国空軍はスピットファイヤをマーリン40系列を搭載したMk.Xから、より大出力のマーリン60系列に換装した改修型のMk.\に主力生産機を切り替えていた。
 日本軍も同様にFw190Aに対抗するため各種新型機、あるいは改修機を戦線に投入した。
 零式艦上戦闘機もその例外ではなく、栄系列よりも格段に大出力の金星エンジンに換装した33型が新たに戦線に投入された。

 この33型は、防弾燃料タンクや消火装置、これに加えて搭乗員保護用の防弾板、さらには武装強化を兼ねると共に、翼端を短縮してロール率を向上させた新型主翼を装備した全面改修型だった。
 本来はエンジン換装までは計画しておらず、栄21型あるいはその改良型の栄31型をそのまま搭載する予定だったが、予想以上に高性能であったFw190Aに対応するために、零式艦上戦闘機も各種防護設備の搭載による重量増加を加味した上で、機体の基本性能の向上を図るために、エンジン出力の抜本的な強化を図る必要があった。
 金星エンジンは栄系列よりも格段に大出力だったが、同様にエンジン直径も大きく、エンジンカウリングを含む機首部の部材は全面的に改設計されている。推力式の排気管を装備した金星エンジンの容積は栄と比べて大きく、従来型で機首に装備していた機銃を収納するだけの空間が無くなってしまったため、機首装備の機銃は廃止されている。
 その代わりに、改設計された主翼部は搭載武装が強化されており、従来から長砲身化されたうえベルト給弾式となって装弾数が増加した20ミリ機銃と共に13.2ミリ機銃が追加して搭載された。
 兵装は強化されたものの、機首機銃と比べると主翼に搭載された機銃は、弾道がぶれやすく、命中精度が劣ると不満を述べる搭乗員も少なくなかった。

 就役した零式艦戦33型は、22型同様に空母艦載機と陸上配備機を兼用しており、日本帝国の第二次欧州大戦への参戦と時期が重なったことから大量生産が予想されたが、陸上配備機としてはやや遅れて水冷エンジンを搭載した44型も制式採用されており、当初予想されたほどには生産数は多くなかった。
 大出力化したエンジンなどの重量増加に対して、翼端短縮などで可能な限りの空気抵抗を削減した分だけ翼面積は逆に減少しており、ロール率の上昇による旋回速度の向上などから、Fw190Aなどの独伊新鋭機と伍し得た一方で、これまでの零式艦上戦闘機が持ちえていた長航続距離性能や低空低速時の機動性は大きく低下しており、この時の経験が、三菱の戦闘機開発チームが零式艦上戦闘機に代わる次期主力艦上戦闘機計画時に開発した烈風に反映されたようである。


 


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