九九式自動狙撃銃





<要目>
銃全長1145mm 銃重量4970g 初速740m/s
装弾数10発(固定マガジン、クリップ装弾) 使用弾薬7.7ミリ九九式銃実包

 日本帝国陸軍はシベリアーロシア帝国の成立と軍事交流の中で、ロシア帝国において分隊内で運用されていた選抜射手制度を取り入れていた。
 また日本陸軍で制式採用されていた三八式歩兵銃は低伸弾道を持つことから優れた命中精度を持っており、従来は専用の狙撃銃を開発していなかったが、本格的に選抜射手制度を取り入れると同時に三八式歩兵銃改造の狙撃銃を採用していた。

 1930年代後半、日本陸軍ではボルトアクションの三八式歩兵銃に代わって、ロータリーボルトロッキングによるガスオペレーション方式を採用した九九式自動小銃を制式採用したが、同時に三八式歩兵銃改造の狙撃銃と同様の方法で制式化された小銃の改造によって分隊内の選抜射手が使用する狙撃銃の開発を試みていた。
 九九式自動小銃の生産ラインにおいて、試射工程で高い精度を出した個体は選別されると狙撃銃仕様の改造を受けて九九式自動狙撃銃として、通常編制の歩兵連隊において分隊内で2名が配置される選抜射手に支給されていた。
 この歩兵銃の生産態勢に組み込まれた選抜射手用狙撃銃生産の手法は三八式歩兵銃と同様だったが、ボルトアクションの三八式では装填時に狙撃用スコープと干渉するため歩兵銃用の汎用品からボルトハンドルが下部に折り曲げられた専用形状のものに交換されていたのだが、自動装填の九九式自動小銃ではその必要性はなかったため、機関部は九九式自動小銃と狙撃銃では変更点は無かった。
 九九式自動狙撃銃への改造にあたっては、作業はほぼ狙撃用スコープの取付金具と銃身下部の折りたたみ式バイポットの取り付けのみと言っても良かった。

 取り付けられる狙撃用スコープ自体は三八式と同様のもので倍率2.5倍、あるいは4倍のものが使用されており、全歩兵連隊に広く支給される選抜射手用のものであるため、距離調整機能などは省かれていたものの、構造が簡易であるために戦場での乱暴な取り扱いに耐久しうる頑丈さを持ち合わせていた。
 銃身近くに配置されたバイポットも調整機能のない簡易なものだったが、これは当時制式化されていた銃剣の柄と形状が合わせて作られており、銃剣取付金具に固定することが出来た。

 九九式自動狙撃銃は、通常編制の歩兵分隊に支給されるものであるため数万丁が短期間で量産された。後の専用狙撃銃とはことなり、決して最高精度を求めて製造されたものではなかったが、元々分厚いニッケルクロームメッキされた銃身を使用する命中精度の高い歩兵銃である九九式自動小銃を原型とするだけあって、歩兵銃による決戦距離以上ではあるものの、1000メートルを超えるような超長射程での戦闘を要求されるわけではない選抜射手という用途には充分以上の精度を発揮できた。

 なお原型である九九式自動小銃には固定マガジン、セミオートの一型の後に、脱着マガジン、セミ、フルオート切り替え式の二型が採用されていたが、九九式自動小銃二型はフルオート射撃時の反動制御の難しさや、新たに国際連盟標準弾(280LN弾)を使用する新型自動小銃の開発が進められたために生産数が少なかった。
 そのため九九式自動狙撃銃は一型を原型とするものしか生産されなかった。基本的に選抜射手用の狙撃銃は、改造元となる歩兵銃を配属された部隊と同じものが支給されることになっていたが、九九式自動狙撃小銃二型が配備された一部の部隊にも引き続き一型を原型とする九九式自動狙撃銃が支給されていた。





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