九七式重襲撃機




九七式重襲撃機(九七式重爆撃機三型改)


<要目>
全幅22.5m 全長20.5m 自重8.5トン 乗員8名 武装75ミリ砲×1、20ミリ単装機銃×1、12.7ミリ単装機銃×3 エンジン出力1900hp×2 最大速度520km/h 航続距離2,600km

 九七式重襲撃機は、日本陸軍が当時制式採用していた双発爆撃機である九七式重爆機三型を改設計した対地攻撃機である。その特徴は機首の爆撃手用装備を外して、大口径砲を固定式に搭載したことにある。
 元々九七式重襲撃機は、主力爆撃機部隊に先行して、爆撃目標地点に配備された野戦高射砲を撃破する敵対空網制圧用に開発された。そのため3インチ級の敵高射砲の射程外から攻撃するために、同じく野戦高射砲を航空機搭載用として改造の上転用したものを搭載した。

 開発当初は長砲身高初速のボフォース社製75ミリ高射砲を搭載する予定だった。このボフォース社製の高射砲は、重襲撃機型開発当時は、ライセンス生産が開始されたばかりの新型砲で、それまで使用されていた旧式の八八式野戦高射砲と比べ、口径は同一だったが砲身が長いため射高、射程共に大きい期待の新兵器だった。
 事実この野戦高射砲は、想定通りの高射砲として使用された他、改設計の上で戦車砲などにも転用されている。

 しかし、このボフォース社製高射砲は長砲身大威力のため重量や、後座量が航空機搭載用とするには過大であるとされてしまった。そこで、一世代前の旧式砲ではあるが、軽量で機動性の高い八八式野戦高射砲を改造して航空機搭載用として搭載した。
 この大口径砲は機首に固定されており、砲口部のみが機首から前方にはみ出している。旧式の短砲身砲とはいえ、航空機用としては格段に大きな砲であるため、砲座は操縦席近くにまで達しており、副操縦士が装填作業を行なっていた。正確には七五ミリ砲が機体右側にオフセット配置されていたため、副操縦士席は砲関係の機材および再装填スペースに当てられており、操縦関係が取り除かれているため、副操縦士というのは正しくなかった。
 搭載砲の照準、発砲は、固定砲であるため主操縦士が実施していた。

 75ミリ砲の搭載のほかは基本的に原型となっていた九七式重爆撃機三型を踏襲していたが、機体上部後方には逆探知機および電波警戒機を収めた樹脂製の風防が追加されている。この電波兵器は、本来用途である敵対空網制圧任務を実施する際に、敵対空部隊が使用する対空捜索レーダーや照準用レーダーが使用する電波を探知するものである。
 このような任務に使用するため、逆探の方位精度、測定周波数範囲は広く、攻撃用途に用いるのに十分な精度をもっていた。
 生産機の中には、これらの代わりに敵レーダーを無効化するための電波妨害装置を搭載したものもあった。また、後に搭載砲を廃した電子戦型も重襲撃機型の設計を一部流用して開発、配備されている。
 なお、重襲撃機型、電子戦型共に、この電波兵器を搭載するために上部に搭載されていた20ミリ連装機銃は廃止されている。このため機首の固定砲を除いた防御機銃は下部、左右側面の取り外し式の12.7ミリ機銃および尾部機銃座に限定されており、近接火力を向上させるために尾部機銃座は12.7ミリ機銃から20ミリ機関砲に換装されていた。

 主砲として搭載された75ミリ砲は威力、射程共に上空から発射する分だけ、地上配備の野戦高射砲よりも優位であり、敵高射砲の射程外から有効弾を与えることも可能であった。
 だが、要地防衛のために陣地で隠蔽された野戦高射砲を空中から発砲前に発見するのは難しく、その長射程を本来の目的である対空網制圧に活かすことは難しかった。
 概ね九七式重襲撃機は、逆探を使用した敵レーダー破壊のほかは、対地、対艦攻撃などに使用された。一部の機体は固定式の75ミリ砲を複数の機関砲に換装していた。
 また、逆探や電探を利用して浮上中の潜水艦を撃沈した例もあったが、長距離海上飛行が必要なため陸軍機が海上哨戒任務に用いられることは少なかったようである。


 


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