九七式力作車





<要目>
重量13.2トン、全長6.10m、エンジン出力120hp、乗員3名、装甲厚35ミリ(最大)、武装7.7ミリ機関銃×1、最高速度22km/h

 九七式力作車は、戦車部隊に随伴して故障車や鹵獲車輌を回収するために、日本帝国陸軍が開発した戦車回収車である。
 従来、戦車の回収には九五式野戦力作車が使用されていたのだが、牽引力が小さいために、戦車の回収には時間が掛かっていた。そこで九七式中戦車の配備に合わせて、これを原型として回収車の開発が進められたのである。

 九七式中戦車から力作車への改造には、概ね兵装を取り除く代わりに回収、整備用の機器を追加する形で行われた。車体前部には戦車壕の構築や、地雷原の除去など用いるための排土板を装備している。この排土板は不使用時に走行の妨げとならないように油圧式で跳ね上げることができた。
 車体後部には牽引や野戦整備のためにAフレーム式のクレーンが搭載されている。クレーンの吊り上げ重量は5トンで、兵装、エンジンの交換といった野戦整備を行うことが出来た。
 このクレーンの作動は、外装式の電動機とベルト結合されたウインチで行うが、このウインチはレバー操作でフレーム自体の動作とフックの巻きおろしを切り替えることが出来た。
 しかし、このレバー操作は車内からでは行うことが出来ず、敵前回収などでは使い勝手が悪いものとなった。

 原型である九七式中戦車から、回収用機材装備のために、主な兵装は取り除かれていたが、敵前での回収を行うために、敵陣地制圧を目的として5.7センチ砲塔に代わって、7.7ミリ機関銃を装備した一人用小型銃塔が装備されている。
 この7.7ミリ銃塔は、従来の砲塔と装備位置は変わらないが、クレーン操作用電動機と干渉するため車体後部方向への射撃はできない。

 制式採用当時の戦車隊主力であった九七式中戦車に随伴する戦車回収車としては、概ね満足な性能であった九七式力作車であったが、僅か数年で重量12トンの九七式中戦車から、25トンの一式中戦車、35トンの三式中戦車へと中戦車の重量化が進んだ結果、一線級の装備として活躍できた期間は短かった。


 


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