一式対空戦車





<要目>
重量9.6トン、全長4.4m、エンジン出力220hp、乗員四名(車長、砲手、機関銃手、操縦手)装甲厚15ミリ(最大)、武装連装2センチ高射機関砲、7.7ミリ機関銃×1、最高速度53km/h

 第一次欧州大戦で初めて大々的に運用された航空機は、戦間期に大きく発展し、1930年代後半には重武装、重装甲を施された対地攻撃専門の機体まで出現するようになっていた。そのため、対空部隊も組織的かつ大規模に編成されるようになっていた。
 しかし、固定配備の高射部隊では、常に運動を強いられる機甲部隊に対しては、防空網を広げることが難しく、戦車や装甲兵車に随伴できる機動性の高い自走対空砲が必要となっていた。
 そこで九五式軽戦車を原型として開発された自走高射機関砲が一式対空戦車である。

 一式対空戦車は、九五式軽戦車の車体をそのまま利用し、原型の3.7センチ砲戦車砲を搭載した砲塔の代わりに、連装の2センチ高射機関砲を装備する新規設計の砲塔を搭載している。
 この連装機関砲は、1930年代に試作開発された高初速の高射機関砲で、一式対空戦車のほか地上に設置しても使用され、日本陸軍高射部隊の主力近接対空砲であった。弾種は徹甲弾のほか最も多用された榴弾が配備されていた。
 高速で飛来する航空機に迅速に照準を行うため、九五式軽戦車では人力操作であった砲塔は、一式対空戦車では旋回、仰俯角動作が電気駆動になっていた。
 砲塔旋回速度を上げるため砲塔前後のバランスを取る必要があり、連装機関砲の重量を相殺するため砲塔後部にカウンターウェイトとしてバスルが設けられており、機関砲予備弾倉格納棚が設けられている。
 主兵装である砲塔装備の連装機関砲の他、車体部は原型そのままであるため、車体前半機銃の7.7ミリ機関銃もそのまま装備されている。
 高射機関砲は高い仰俯角度が取れるように砲塔が設計されているが、この7.7ミリ機関銃の射界は前方のみである。
 車体部は九五式軽戦車と同様の防弾板で組み上げられていたが、砲塔は軽量化のためより薄い防弾板が使用されている。これは対戦車、対陣地戦闘を主目的としていないためでもあるが、対歩兵銃あるいは断片防御としては十分なレベルであり、特に装甲厚に関しては問題視されていない。
 一式対空戦車は、初期生産分は車体を含め新規生産されたが、九五式軽戦車の性能が陳腐化し二線級となって前線から引き上げられた後は、既存車体と新規生産の砲塔を組み上げて再生されることが多かった。
 初期生産分の車体は九五式軽戦車の生産ラインを転用したため、同一設計であるが、生産コストを押し下げるため一部が溶接構造となっており見分けは容易であった。
 しかし、元々対空戦車は配備先が機甲部隊に限られており、またより有力な後継車両が出現したため、一式対空戦車の生産数は少ない。
 
 


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