三式力作車





<要目>
重量34トン、全長6.6m、エンジン出力600hp、乗員4名、装甲厚80ミリ(最大)、武装7.7ミリ機関銃×1、最高速度50km/h

 日本陸軍は1942年後半から一式中戦車の後継として三式中戦車を導入したが、30トンを優に超える同車の運用を支援するために車体設計を同一とする専用の戦車回収車の設計を平行して行っていた。
 同様に一式中戦車を原型とした二式力作車が前年に制式化されていたが、20トン級戦車を原型とする二式力作車では従来の重戦車の車重をも超える三式中戦車の回収には車重も牽引力も不足していたため、三式力作車が引き続き制式化された。

 三式力作車の基本的な構造は戦車回収車として開発されていた九七式力作車、二式力作車と同一だったが、各部には改良されたものが使用されていた。全周射界を持つ代わりに、旋回装置などの重量がかさむうえに車体上面の少なくない面積を専有する自衛用の銃塔は廃止され、前部に機銃がボールマウント式に装備された大柄な固定式戦闘室が配置された。
 車体部は三式中戦車を流用したために中戦車同様の装甲を有していたが、段列隊員および一部機材を収容するために配置されたこの戦闘室は弾片防御程度に限られていた。
 戦闘室と車体の側面には各種工具や牽引用ワイヤーやシャックル、工事用木材などを固縛するためのフックや工具箱が配置されており、車体前部には従来の力作車同様の排土板が備えられていたが、整地作業時の安定性や強度を考慮して排土板吊上げ用の油圧シリンダーが上部から下部に移されていた。
 この排土板はもともと三式力作車用に開発されたものだったが、障害物除去用として一個小隊から中隊に一両程度の割合で通常型の三式中戦車にも装備されて部隊の先頭に立って地雷処理などに使用された。

 また、エンジンや砲身の交換などに使用するクレーンは強度や使い勝手の向上を狙って従来型のAフレーム方式から頑丈なジブクレーン方式に変更されていた。
 このジブクレーン基部にはクレーン駆動用のモーターなどが収められている他に取り外したエンジンや砲身といった戦車部品の一時保管、運搬用の架台が設けられていた。
 ジブクレーンの吊り上げ力は従来型のAフレーム方式とほとんど変わらなかったが、戦車隊段列の作業には充分なものがあり、旋回できる分使い勝手は良かった。
 通常の部品交換作業では対象車両のすぐ脇に力作車を配置して予備部品の交換作業を行うが、この際にAフレーム方式では吊り上げた部品を移動させるのに車体を動かさなくてはならないが、ジブクレーンの場合は、車体を動かすことなく部品を動かせるため作業効率は高かった。

 三式力作車は、三式中戦車に装備転換された部隊の段列に主に戦車回収車として配備された他、仕様変更されたものが機械化された工兵部隊に配備された。


 


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