二式対空戦車





<要目>
重量9.5トン、全長4.1m、エンジン出力220hp、乗員三名(車長、砲手、操縦手)装甲厚17ミリ(最大)、武装連装2センチ高射機関砲、最高速度55km/h

 旧式化した九五式軽戦車の車体に連装機関砲を搭載した砲塔を搭載した一式対空戦車を機甲部隊に随伴する対空車両として開発した日本陸軍だったが、二式軽戦車の実用化に伴い、母体となる車体をこれに変更した対空戦車の開発を同時並行で進めていた。
 初期生産型の一式対空戦車は溶接構造の新規生産車体を採用していたものの、鋲構造の元設計をそのまま溶接構造とした無理のある設計であり、コスト面や生産性から新規生産車体の評価は芳しく無く、またこの時点で九五式軽戦車はすでに生産が中止されたため、その代替が要求されていたのである。
 幸いなことに九五式軽戦車の後継となるために運用面における互換性を重視して二式軽戦車は同格の車体として設計されていたため、対空機関砲を搭載した一式対空戦車の砲塔は、砲塔リングに若干の改設計を施した上で搭載し直すことが出来た。
 元々一式対空戦車は旧式化した九五式軽戦車に砲塔を搭載するために補機類は可能な限り砲塔内に収められており、改設計は容易であり、製造用の治具も大半が転用可能だったが、リング径が異なるため砲塔まるごとの互換性はなかった。

 並行して軽戦車仕様と設計が進められてた為に二式軽戦車とほぼ同時に制式化された二式対空戦車は、拡大される機甲部隊の整備に伴ってある意味において旧式車両を転用した試作車両とも言える一式対空戦車に代わって戦車部隊に随伴できる対空自走砲として大量に配備された。
 九五式とは違って自衛用の車体機銃が存在しないために、対歩兵戦闘において不利ではないのかという危惧の声もあったのだが、実際には皮肉なことに対空戦車が配備された国際連盟軍は大半の戦場で枢軸軍に対して航空優勢が確立されており、むしろ20ミリという大口径の連装機関砲による対地攻撃を実施することが少なくなかった。
 このような射撃の場合は榴弾を使用したが、歩兵などの非装甲目標、簡易な塹壕程度に対しては発射速度の高さから大きな効果を発揮したようである。

 一式対空戦車の後継として同等の性能を有する対空戦車として機甲化された部隊の機動砲兵連隊指揮下の対空戦車隊に配備された二式対空戦車は、戦闘時には戦車部隊に配属されて、敵航空機に対する近接対空射撃、さらに対歩兵射撃などに多用された。
 概ね高い評価を受けた二式対空戦車だったが、戦車と比べても遥かに高速で機動する航空機に対する射撃を行うには砲塔旋回速度が不足していたこと、また砲塔バスケットが無いために砲塔要員が回転に追随するのが難しいことが前線からの意見としてあげられていた。
 さらに発射速度の高い2センチ連装機関砲だったが、二式対空戦車の配備頃から多用されるようになった戦闘爆撃機による緩降下攻撃に対処するには射程が不足する上に、敵機に一撃で致命的な損害を与えられるほどの威力がないとも判断されていた。
 そこでより大威力長射程の大口径対空機関砲を搭載した対空戦車の配備が要求されることとなった。

 


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