第二話:硫黄島沖海戦






    1945年 2月22日 硫黄島沖北方

 国枝中尉は、力強く鳴り響くエンジンの音を聞いているうちに段々と眠気を誘われていた。愛機である二式大艇は余計な荷物を大量に積んでいるわりには快調に飛行していた。一大作戦の要をになうのだからと整備隊が念入りに整備してくれたのが効いているのかもしれなかった。
 すでに操縦は副操縦手の有賀曹長に任せているから国枝中尉が操縦桿を握っている必要も無い。そのせいもあって眠気を押さえることは難しかった。だが、まぶたが閉じようとした時に後ろから物音がして慌てて中尉はあらたまって操縦席に腰掛けた。
 予想通りに後ろから顔をのぞかせたのは電探操作員として乗り込んでいる長谷川だった。二式大艇の乗員の中で長谷川だけが海軍軍人ではなかった。今回の作戦の為に新たに二式大艇に搭載された試製63号電探の操作を行う為に徴用された学生だった。
 63号電探は艦載型の33号と共に東北大学で試作された物だから、操作員に開発に携わっていた長谷川が起用されたのだ。その理屈はわかるのだが、国枝中尉は彼女を二式大艇に乗せるのをあまり面白く思ってはいなかった。
「作戦空域まで後どれくらいかかるのでしょうか」
 心配性らしい声に国枝中尉が腕時計を見ようとした。だがその前に有賀曹長が持ち前の明るい声でいった。
「このままの速度なら本機が作戦開始するまであと三時間と言った所でしょう。護衛機との邂逅までならあと一時間といったところですな。ところであの新しい電探の調子はどうです」
 興味津々といった態度の有賀曹長は、翼下につけられた円盤状の奇妙な物体を指さした。操縦中の態度とはとても思えないが、その間も機は全く振動しなかった。有賀曹長は二式大艇が制式化された頃からの操縦手だから国枝中尉よりもずっと操縦はうまかった。国枝中尉は一応注意するように言おうとしたのだが、有賀曹長の態度があまりにも自然だったからタイミングを逃していた。
「ええと・・・基地上空で確認した時は順調に稼働していました。でも電波発振を控えていますから今の調子はわかりません」
 国枝中尉は、馬鹿正直に答える長谷川に思わず舌打ちをしそうになっていた。そんな不吉なことは下士官や兵の前で言うことではない。そうで無くとも長谷川のおどおどとした態度は部隊の士気を下げるような気がしていた。
 だがそう考えたのは国枝中尉だけのようだった。すぐに有賀曹長は長谷川を慰めるように電探の優秀さをいった。有賀曹長は勿論、後席にいた電信員なども愉快そうに笑みを見せていた。どうやら彼らは長谷川のことがいたく気に入ってしまったらしい。有賀曹長などはともかく、他の若い兵たちには下心があるのかもしれないが。
 確かに彼女が持ち込んだ63号電探の性能はすばらしいものだった。というよりも今まで二式大艇に搭載できるだけの電探は存在しなかったのだ。一応、研究所などでは実験段階の物があるという話は聞いていたが、長谷川が持ち込んだのはそれとは別のものらしい。
 63号電探は今までの陸上設置型や艦載型とはかなり構造が違うらしい。東北大学電波研究室独自の方法だとかいう話だが、センチメートル波だの何だのと言われても国枝中尉にはさっぱりわからなかった。だが63号電探が今までの電探とは違う画期的な方法だと言うことは外観からもわかった。
 だが国枝中尉は63号電探をあまり信用できなかった。それは単に試作機だから信用できないと言うのではない。長谷川と一緒に電探を飛行隊に持ち込んできた男が信用できなかったのだ。
 東北大学助手の西園寺と名乗った男は困惑している飛行隊の面々を尻目に目を輝かせながら二式大艇を見て回っていた。そしてエンジンの調子などを整備兵にしつこいほど尋ねた後に国枝中尉の機に勝手に電探を設置していた。
 さすがにここまで来ると飛行隊司令みずから西園寺を問い詰めようとした。だが彼らに同行していた士官から連合艦隊挙げての作戦の為だと聞かされればどうすることも出来なかった。迷惑なのは国枝中尉だった。いつのまにか奇妙な装置を積まされて何をするのかよくわからないまま作戦に参加させられているのだから。
 国枝中尉に知らされたのは目標空域とそこで電探を使用するということだけだった。そこへ行って後はどうするのかは長谷川と連合艦隊から派遣されてきた参謀しか知らなかった。やけに鋭い目をした情報参謀は発進してからずっと後ろの空いている席に座っていた。国枝中尉にとってみれば長谷川とは別の意味で扱いづらい人物だった。
 連合艦隊所属の参謀と言うことは参謀飾繻などからわかるのだが、それが連合艦隊参謀部なのか、それとも隷下の艦隊のものなのか、そんな事さえわからなかった。村松少佐と名乗ってはいるものの得体の知れない男だと言うことに間違いは無かった。それとなく所属を訪ねてはみたものの、国枝中尉に帰ってきたのは無関心な表情だけだった。
 まるで海軍軍人というよりもは、陸軍の中野学校出身者にも見えるな。国枝中尉は正体の見えない村松少佐にそんな印象を持っていた。
 ひょっとすると乗員達がやけに長谷川にやさしいのは得体の知れない村松少佐を避けたいだけなのかもしれない。そう考えると国枝中尉はため息をつきそうになっていた。乗員同士の結束が重要な作戦行動中にこの不和が露呈しなければいいのだが。そう考えていた。


    1945年 2月22日 硫黄島

 曙光が見え始めた硫黄島に明らかに人の作り上げた明かりがともっていた。エドワード・スプルーアンス中佐は駆逐艦の艦橋から忌々しそうな目でその明かりを見ていた。その明かりは日本軍の爆撃によって起こされた火災によるものだった。
 日本軍の爆撃機は唐突に現れて高高度から爆弾を落としていった。硫黄島を十重二十重と包囲している米軍も迎撃機を上げる余裕は無かった。米軍パイロットの技量が向上しているとはいっても夜間、迅速に離艦と着艦をこなせるだけの技量を持っているのかは怪しいところだった。
 本来ならレーダーを装備した夜間戦闘機や同じくレーダーを使用した対空砲火で迎撃すべきところなのだが、硫黄島の滑走路を完全に占領できていない今は夜間戦闘機の進出は出来ないし、日本軍の爆撃機は高高度を航過していったから対空砲火も間に合わなかった。
 勿論、高高度からの水平爆撃なのだから爆撃の効果も少なかった。というよりも闇夜の中で適当に海岸線に爆弾をばら撒いたと言うだけだ。だがそれだけでも上陸から三日しか経っておらず海岸線に多くの補給物資を積み上げたままだった米軍には大きな損害を与えるのに成功していた。
 スプルーアンス中佐はそのことを思うと思わず罵り声を上げていた。これも全て上陸した海兵隊が間抜けなせいだ。こんなちっぽけな島に隠れるジャップどもにいつまでも時間を食っているからジャップの爆撃機なんぞに攻撃されてしまうんだ。
 そう決め付けるとスプルーアンス中佐は力強いLSTのエンジン音に気が付いた。見張りの声に振りかえると一隻のLSTがまだ燃え続ける海岸に向かっていった。おそらく火災を止める為の部隊を上陸させるつもりだろう。スプルーアンス中佐は突然の空襲に右往左往しながらも対処しようとする自軍に思わず笑みを浮かべていた。
「航海長、海岸に上陸するLSTを避けるぞ。本艦は通達のあったとおりに第58任務部隊の護衛に加わる。操艦は任せる」
 元気よく返事して操艦作業に入る航海長を確認するとスプルーアンス中佐は再び海岸を見た。早くも動き始めた駆逐艦を避けながらLSTは海岸に近づいていく。ふとスプールアンス中佐はLSTの外側通路に陣取る海兵たちを見つけていた。彼らは始めての実戦なのか顔を青くしているものもいた。中佐はため息をつきながらも彼らの無事を祈っていた。レーダー室からの悲鳴にも似た叫び声が上がったのは次の瞬間だった。
「レーダーに機影、数は・・・」
「どうした!ジャップは何機いるんだ」
 いきなり声の途絶えたレーダー室に思わずスプルーアンス中佐は怒鳴っていた。だがレーダー室からは自身の無さそうな声が返ってきただけだった。
「それが、いきなりレーダーが雲がかかったみたいになって敵影がさっぱりわかりません」
 電波妨害だ。だれかがそうつぶやくのをスプルーアンス中佐は呆然としながら聞いていた。いままで日本軍が電波妨害を行ってきた例は無かったからだ。だがスプルーアンス中佐はすぐに正気に戻ると艦橋内に響き渡るように言った。
「落ち着け、すぐにジャップが来るぞ。まだ空母も艦載機を上げられんはずだ。俺たちの対空砲火が頼りだ。大丈夫だ。とろいジャップなんざマリアナの七面鳥打ちの二の舞にしてやるぞ」
 そう活を入れると艦橋からは歓声があがった。乗員の士気が高いことを確認するとスプルーアンス中佐はまたいった。
「さっきの命令は取り消し、艦長が操艦する。機関全速。操舵手!、面舵一杯だ。本艦は58任務部隊外周で対空陣に加わる」
 命令してすぐに足元からの振動があきらかに変わった。ほとんど最高速力を出してスプルーアンス中佐の駆逐艦は艦隊外周へと向かっていった。

 スプルーアンス中佐の駆逐艦が、硫黄島の外側で待機する空母輪陣形の最外円に出たのと日本軍機が肉眼で確認されたのはほとんど同時刻だった。日本軍機は太陽を背負う様にして近づいてくる。そのおかげで見張りは機影を確認するのに苦労していた。だが、さすがにこの距離になるとノイズ混じりながらもレーダーに機影が映り始めていた。
「ジャップは50機以上か・・・しかしこれだけの戦力で攻撃をかけてくるという事はやつら体当たり攻撃のつもりだな」
 忌々しそうにいうとスプルーアンス中佐は味方の空母を見た。空母は艦載機を上げないまま回避運動の準備をはじめていた。いまから艦載機を上げる為に風上にたてば、艦載機を上げる為に逆に当ててくれといわんばかりの直線運動をとるはめになる。
 体当たり攻撃をかけるとすれば今は最善の時間だった。空母は闇夜を恐れて艦載機を上げられず、逆に上空からは周囲を照らし出した陽光によって海上部隊の識別は容易になる。罵り声を押さえながらスプルーアンス中佐は対空戦闘を命じた。
 すぐに12.7cm砲が右舷から突っ込んでくる日本軍機に向けられた。だが海面近くにまで高度を落とした日本軍機には、米軍自慢のVT信管は電波が海面で乱反射するせいで使えなかった。時限信管であてるしかない。
 だがスプルーアンス中佐は見張りから奇妙な機があるという報告を受けた。日本軍の一式陸攻が中高度を逃げ回る様に飛んでいるというのだ。中佐も見張りに並んで双眼鏡をその方向に向けた。
「確かにワンショットライターのようだな。やけに抱えている魚雷が大きいように見えるが・・・まぁいい。砲術長、高角砲で狙えんか?」
「少しばかり距離と高度があるように見えますが・・・あの高度なら低空のジークを相手にするより楽です」
 予想した通りの返答に頷くとスプルーアンス中佐は発砲を命じた。たちまち一式陸攻の周囲に黒煙がたなびく。スプルーアンス中佐に習って周囲の艦も撃っていたからかなりの効果があったはずだ。ひょっとすると撃墜されるか、そうで無くとも被弾した機で輪陣形の中に入ることは出来ないだろう。
 だがそう考えた直後に一式陸攻は腹に抱えていたものを落としていた。おそらく逃走の為に少しでも身軽になるように重量物を捨て去ったのだろう。そう考えたスプルーアンス中佐はそれを見て笑みを浮かべながらいった。
「よくやったぞ、ワンショットライターは魚雷を捨てて・・・」
 スプルーアンス中佐は最後まで言いつづけることが出来なかった。落下していた物体はある程度まで高度を落とすと、後部から炎を吐き出した。それが暴発した爆弾などではないことは明白だった。
 何故ならばその物体は明らかに意思を持った動きを見せていたからだ。気が付くと一式陸攻の全機がその物体を投下していた。白く塗られ、翼を持った魚雷型をしたその物体は見る間に凄まじい加速度で突っ込んできていた。スプールアンス中佐は最初に加速した機体にコクピットらしきものを発見していた。
 やはりジャップはクレイジーだ。あれは人間爆弾だ。そう考えていたスプルーアンス中佐は見張りの悲鳴に一式陸攻の方に向き直った。するとさっきの人間爆弾と同じ機体が一機こちらに向かってきていた。飛行経路を考えるとおそらくその機体も輪陣形の中に入り込もうとしていたのだろう。しかし猛烈な対空砲火によってそれを遮られた。
 俺たちはついでなのか。スプルーアンス中佐はやるせない思いで接近する人間爆弾を睨みつけた。最後の瞬間パイロットと目線があったような気がした。総員退艦の命令はあまりにも馬鹿馬鹿しくて出さなかった。どのみち避けられない。
 次の瞬間、スプルーアンス中佐の駆逐艦にほとんど真正面から人間爆弾「桜花」が命中した。桜花は最高速度を維持したまま艦橋を押しつぶして、竜骨近くまで到達してから信管を発動させた。桜花が搭載していた1200kgの炸薬は空母や戦艦でさえ撃沈できる量だった。駆逐艦は、艦橋を含む中央部を消滅させる大爆発を起こして二つに割れた船体を沈ませていった。


    1945年 2月22日 第5艦隊

 唐突に始まった夜間爆撃から連続した日本軍の攻撃は、やはり唐突に終わっていた。攻撃時間の設定は絶妙だったが、いかんせん戦力不足は否めなかった。襲来した日本軍は50機にも満たない数であることは間違い無かった。
 しかし、その寡兵がもたらした戦果は尋常なものではなかった。夜間爆撃は海岸上に置かれていた補給物資をいくらか焼き払っただけだったが、その後の体当たり攻撃によって第5艦隊には無視できない損害が出ていた。
 日本軍は新型の人間爆弾まで投入していた。それ以外にも零式艦上戦闘機や一式陸攻が襲来してきた航空隊には含まれていた。体当たり攻撃をかけてきたのは人間爆弾だけではなかった。零式艦戦も250kg爆弾を抱えて突っ込んできたのだ。それどころか一部の一式陸攻まで被弾して帰還が望めなくなったのか破れかぶれになって体当たりをかけていた。
 これによって第5艦隊は第58任務部隊の正規空母が一隻沈没、LSTと空母それぞれ二隻が大破していた。その他の護衛艦も戦艦が一隻中破し、駆逐艦も一隻沈没していた。だが、実際の被害よりも兵員に与えた精神的な衝撃の方が大きかった。
 いままで上陸した海兵隊はともかく艦艇部隊に大きな損害は無かった。それがわずか数十分の戦闘でこれだけの損害を出してしまったのだ。それも体当たり攻撃と言うアメリカ側からすれば狂気としかいえない方法であることが兵員に与えた衝撃を大きくさせていた。そして体当たり攻撃による損害は第五艦隊司令部にも大きな衝撃を与えていた。
 第五艦隊は米軍硫黄島攻略部隊の最高司令部だった。実際に上陸する海兵隊も、指揮系統上は合同遠征軍司令官のターナー中将を通じて、第五艦隊司令長官のスプルーアンス大将の指揮下にあった。だがその第五艦隊司令長官スプルーアンス大将は指揮をとりうる状況ではなかった。真っ青な顔になって参謀の報告を聞いていた。
「沈没した空母の乗員救助は終了しました。生存者は231名です。今のところ重傷者の病院船への搬送が行われています。それと大破した空母2隻ですが、どちらも戦闘行動は不可能です。護衛艦をつけて後送する用意を進めています。幸いなことにLSTも含めて四隻とも航行は可能です」
 報告している参謀は、呆然としているスプルーアンス大将が自分の言葉を聞いていないのがわかっていたが、義務として報告を続けた。予想通りに、報告を終えても大将からは何の指示も無かった。さすがに戸惑ってその参謀は居心地悪そうに視線を左右に向けた。
 誰も発言しない重苦しい雰囲気の中でそれまで黙っていたムーア参謀長がいった。
「沈没した・・・その駆逐艦の方は生存者はいなかったのか?」
 それはすでにわかりきった質問だった。だがそれにもかかわらずスプルーアンス大将はすがるような視線で担当の参謀を見た。参謀は僅かに視線をそらしながら冷徹な声で言った。
「生存者はいません。空母に命中した人間爆弾から判断するとあの人間爆弾は魚雷なみの威力があると考えていいと思います。それが駆逐艦にまともに命中しましたから一瞬で沈没したものと思われます」
 それを聞いてスプルーアンス大将は頭を抱えた。沈没したただ一隻の駆逐艦には艦長として彼の息子が乗っていたのだ。ムーア参謀長は一人息子を失った大将に同情しながらも、心を鬼にしていった。
「長官、今のところ損害は許容範囲内に収まっています。決して無視できるものではありませんが、それでも日本軍を阻止できる戦力はあります。ただし的確な指示さえあれば、ですが。日本軍の攻撃がこれだけとは思えません。いざと言う時に長官がそれでは困ります」
 スプルーアンス大将は顔を上げるとムーア参謀長に向き直った。
「わかっている、わかってはいるよ。ただ代われるものなら誰かに代わってもらいたい」
 ため息をつきながらムーア参謀長が言った。とてもこれが数時間前までの冷静で優秀な艦隊司令長官だとは思えなかった。
「誰に代わると言うのですか。私ですか、それともターナー中将かミッチャー中将ですか。だが私には艦隊を指揮する権限は無い。二人にはそれぞれの仕事がある。ひょっとするとハルゼー大将なら長官の代わりになってくれるかもしれませんが、ハルゼー大将は数千km後方にいるんです。ここはあなたが指揮を取るしかないのです。もしあなたがそれを放棄すれば、あなたの息子さんと同じ将来のあるアメリカンボーイズが何人も死ななければならないのです」
 ムーア参謀長が言い終わる前に通信兵があわてて入ってきた。その通信兵は室内の司令部要員からの険しい目線に一瞬躊躇したが、すぐに大声でいった。
「偵察機が日本海軍の艦隊を発見しました。艦隊はナガトクラス一隻、イセクラス二隻を主力とする砲撃部隊です」
 おもわずムーア参謀長はスプルーアンス大将に向き直った。大将はまだ暗い顔だったが、通信兵の報告を聞くと僅かに迷ってからいった。
「早朝からの電波妨害は続いているんだな」
「続いています。今のところ通信はどうにかなっていますが、レーダーは使用が困難です」
「よし、ミッチャー中将に連絡しろ、上げられる艦載機のうち半数を電波妨害の阻止に、残りは発見された艦隊を攻撃させろ」
 ムーア参謀長は通信兵から偵察機の位置情報を受け取ると眉をしかめながらスプルーアンス大将にいった
「電波妨害のおかげで気が付くのが遅すぎましたね。敵艦隊との距離が近すぎます。艦載機の迎撃だけでは日本艦隊を撃滅する前に敵艦隊がイオージマにたどり着いてしまいます」
 今度はスプルーアンス大将も間髪を入れずに答えた。
「よし、第58任務部隊から戦艦部隊を分派させろ。指揮官の選抜はミッチャー中将に任せる。それと大事を取って艦載機発艦後は第58任務部隊は島から退避させる」
 参謀たちは一斉に敬礼すると自分の職務の為に散っていった。今日の戦闘はまだまだ続きそうだった。



戻る 次へ
inserted by FC2 system